バンブーズブログ

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[社説]遺族年金の男女差は解消を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/8/20 2:00
 
遺族厚生年金は支給要件に大きな男女差がある
遺族年金は家計を支える者が死亡した場合に残された遺族の生活を支えるのが目的である。だが今の制度は男性が主に働き、女性は夫の賃金・年金で生活することを前提としている。既婚女性も働くのが一般的になった社会の実態に合わせて制度を見直すべきだ。

会社員らの遺族を支える遺族厚生年金の支給要件には男女差がある。妻が遺族になった場合、子どもがいれば夫の死亡時の年齢に関係なく終身年金を受け取れる。子どもがいない場合でも、夫の死亡時に30歳以上であれば終身で支給され、30歳未満だった場合に限り5年間の有期給付となる。

これに対し、夫が遺族になった場合は妻の死亡時に55歳以上だった人だけが支給対象となり、原則として60歳に到達してから支給が開始される。子どもがいる場合は妻の死亡時の年齢に関係なく、子ども本人に支給される。

厚生労働省はこうした制度設計が妥当なのか、2025年の次期年金制度改正に向けて社会保障審議会で議論を始めた。

男女差は女性の就労環境の厳しさを踏まえたものだったが、現在は64歳までの既婚女性の7割強が働いている。男女間の賃金格差はなお大きいものの、専門家からは「欧米各国は今の日本よりも賃金格差が大きかった1980年代〜90年代に遺族年金の男女差を解消した」との指摘がある。

遺族基礎年金は2014年に男女差が解消され、子どもがいれば性別を問わず受け取れるようになった。遺族厚生年金も移行期間を設けた上で男女差を解消する見直しを行う必要がある。

自ら働いて収入を得ることができる現役期に遺族になった場合は、男女ともに有期給付にすべきだ。その際の年金は「遺族が生活を立て直すまでの一時的な支援」と位置づけたほうがよい。

一方、子どもがいる場合、ある程度の年齢に成長するまでは、残された遺族が夫であっても、生活をしっかり支える考え方で男女の給付をそろえるべきだろう。