バンブーズブログ

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[社説]中国は理不尽な迷惑行為をやめさせよ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/8/30 2:00
 
警戒態勢が強化された北京の日本大使館=26日(共同)
東京電力福島第1原子力発電所から処理水が放出された後、原発事故の被災地などに中国からの嫌がらせ電話が相次いでいる。中国にある日本人学校は投石まで受けた。中国政府には、自国民による理不尽な嫌がらせ、危険な行為をやめさせる強い措置をとる義務がある。放置は許されない。

度重なる日本語、中国語の嫌がらせ電話は、原発事故で長期避難を余儀なくされ、ようやく帰還した住人も多い福島県に数多くかかっている。同県に住む人々は、原発事故後の処理では完全に受け身の被害者である。漁業関係者も放出に一貫して反対の立場だ。

中国からの嫌がらせ電話は、被害地域に追い打ちをかける人道にもとる行為だ。これは「言葉の暴力」でもある。中国外務省が「状況を把握していない」とコメントしたのは、極めて無責任だ。

中国の日本人学校に石やレンガ片が投げ込まれる危険な事態も放置できない。2012年秋、沖縄県尖閣諸島の国有化を契機に起きた激しい反日デモの際は、中国にある日本の工場が襲われ、火をつけられる深刻な事態にまで発展した。そのような蛮行を繰り返させてはならない。

中国政府は近年、国際機関の意見をある程度、尊重する姿勢を示していた。だが今回は国際原子力機関IAEA)が「国際的な基準に合致している」との見解を示しているのに、強く反対している。政治的な思惑が先行する非科学的な態度と言わざるをえない。

日本政府は、国際社会に理を尽くして丁寧に説明し、幅広い理解を得る努力を続けてほしい。それが中国の宣伝戦に対処する有効な手法である。

一方、中国側には粘り強く直接対話を促す必要がある。中国が日本からの水産物輸入をとめた影響は大きく、対中感情の悪化も否めない。だが、いま必要なのは冷静さだ。決して感情的な報復合戦に陥ってはならない。

この8月は、日中両国が1978年、平和友好条約に署名してから45年の節目である、本来、双方が腹を割って未来を語り合う好機だった。だが、事態は楽観を許さない。公明党山口那津男代表は中国訪問を取りやめた。

それでも今後、インドや米国で開く国際会議では、岸田文雄首相と中国の習近平国家主席が同席する機会がある。両首脳には、打開の道を探るべき責任がある。