バンブーズブログ

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[社説]時代遅れのNTT法は抜本的な見直しを


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/4 2:00
 
NTT法のあり方に関する自民党のプロジェクトチームで発言する同党の萩生田光一政調会長(8月31日)
NTT法の見直しが始まった。総務省の審議会は2024年夏に結論を出すという。自民党はさらに踏み込み、「NTT法の廃止を含めた抜本的見直し」(甘利明前幹事長)を年内に提言する。

1985年の日本電信電話公社の民営化に伴って導入されたNTT法はアナログ電話が主役だった時代の名残が色濃く、今となっては古めかしさが否めない。

政府与党はスピード感をもって作業を進め、デジタル時代にふさわしい規制体系を構築すべきだ。

NTT法の柱は同法がNTTに課す二つの責務で、その一つが全国あまねく固定電話を提供するユニバーサルサービスだ。ところが、通信の主役は固定電話から携帯電話や光回線による高速データ通信に移行済みで、固定電話の責務はすでに意味を失っている。

携帯を含めて快適な通信環境を津々浦々で実現するのは重要な課題だが、これを今後もNTT1社に背負わせるのは無理がないか。KDDIなど他の携帯会社や新たに登場した「スターリンク」などの衛星通信を含め、業界全体でデジタル時代のユニバーサルサービスを担うのが現実解だろう。

政府はNTT法に固執せず、業界全体をカバーする電気通信事業法での対応を優先すべきだ。

NTT法のもう一つの柱は通信に関する研究開発の責務だが、これも公社時代の雰囲気が残る。

欧米へのキャッチアップ局面では、NECなどの「電電ファミリー」を旧公社が指揮することで日本全体の研究開発の効率が上がったが、そんな時代は遠い昔だ。

むしろこの責務によってNTTが研究成果の開示を迫られ、事業展開が制約されたり、経済安全保障上の懸念のある企業に先端技術が流出したりする恐れもある。

NTTといえども、いわゆる「GAFA」や中国の華為技術(ファーウェイ)に比べると研究開発予算は1桁小さい。余計な足かせを取り除き、研究開発力の減退に歯止めをかける必要がある。

外資規制については、他のインフラ会社と同じく外為法による対応が可能ではないか。NTTが今も寡占する光回線の開放は事業法で措置すれば足りる。NTT法に類する法規制は米欧主要国ではもはや見当たらないのが実態だ。

NTT法の見直しに連動して、政府が保有するNTT株を放出する場合は、株式市場の混乱を招かないよう十分に留意したい。