#社説 #オピニオン
2023/12/8 19:05
NTT法が課す「あまねく提供」と「研究」の責務は時代錯誤が否定できない
自民党がNTT法の段階的廃止を政府に提言した。1985年の旧電電公社の民営化に際して導入された同法は歴史的な役割をほぼ終えており、廃止の方向性は妥当だろう。政府は公正競争の確保など残る課題の検討を急ぎ、技術革新を後押しするような、新たな規制の形を模索すべきだ。
NTT法は同社に責務としてアナログ電話の「あまねく提供」と「研究の推進及び成果の普及」を課しているが、いずれも時代錯誤の感は否めない。
メタル回線の黒電話が通信の主役だった時代は20年以上前に幕を閉じ、現在は携帯通信や光回線上を大量のデータや画像、音声が行き交う時代だ。
ブロードバンド時代の「あまねきサービス」をどう確保するかは引き続き重要なテーマだが、その責務を今後もNTT1社に負わせるのは無理がないか。携帯各社や今後急速な発展の予想される衛星通信を含めて、複数の事業者に提供責任を広げることで、より効率的で災害などにも強い通信インフラの実現をめざしたい。
研究の責務については、いわずもがなの感が強い。トヨタ自動車が「トヨタ法」はなくとも自ら必要と考える研究開発に取り組むように、NTTの研究開発も同社の自主性に委ねるのが筋だろう。
かつて電電公社は通信分野の研究開発で国産メーカーに対する司令塔的な役割を果たすこともあったが、今のNTTにそこまでの力はない。逆に「成果の普及」の規定によって、競争力が損なわれているとすれば、むしろ弊害のほうが大きいといわざるを得ない。
競争事業者が主張するように、公正競争のルールを整え、活発な競争を実現することは国民にとっても最優先事項である。
つい3年前にはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの大手3社の携帯料金の高止まりが指摘され、強引ともいえる政治介入を招いた。電気通信事業法を強化し、独占や寡占に歯止めをかけるのが通信行政の最大の役割である。