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2023/9/7 19:05
日英両政府は供給網の強靱(きょうじん)化で協力する
中国が意に沿わない国に貿易で圧力をかける「経済的威圧」をやめる気配はない。日本は友好国との連携を深め、中国に頼りすぎないサプライチェーン(供給網)の構築を急ぐべきだ。
日英両政府は経済安全保障について、閣僚級で話し合う枠組みの創設で合意した。主にアフリカを念頭に重要鉱物への共同投資をめざすなど、供給網の強靱(きょうじん)化に向けた協力が大きなテーマとなる。
コバルトやニッケルを含むレアメタル(希少金属)は、電気自動車(EV)や風力発電といった脱炭素の技術に欠かせない。
日本はこれらを中国など特定の国からの輸入に頼る。英国は鉱物資源を豊富に持つアフリカとの関係が深い。日英が手を組んで、重要物資の調達先を中国以外に広げる意義は大きい。
東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出に反発する中国は、対抗措置として日本産の水産物の全面禁輸を打ち出した。
科学を無視した一方的で理不尽な措置は、日本に政治的な要求をのませるための典型的な経済的威圧と言わざるを得ない。
岸田文雄首相は訪問先のインドネシアで中国の李強首相と立ち話をし、この禁輸措置をただちに撤廃するよう求めた。
中国側が応じる見込みはいまのところない。李氏は東南アジア諸国連合(ASEAN)関連の首脳会議で処理水を「核汚染水」と呼び、誤った情報を公然と世界に流し続けている。
中国が日本の言い分に聞く耳を持とうとしない以上、経済を使ってさらなる圧力をかけてくる可能性は消えない。
2010年には、沖縄県の尖閣諸島沖で中国の漁船が海上保安庁の巡視船に体当たりする事件が起きた。このときは中国側がレアアース(希土類)の対日輸出を止める報復に出た。同じような事態への備えは怠れない。
主要7カ国(G7)は5月の首脳会議(広島サミット)で「デリスキング(リスク低減)」という考え方を打ち出した。供給網における中国への依存を減らすことをめざすものだ。
それはG7の協力だけでは実現しない。G7以外の国や地域にも働きかけ、中国に過度に頼らない供給網を築く必要がある。資源を持たない日本こそ、その中心的な役割を果たすべきだ。