バンブーズブログ

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[社説]中国は威圧外交をいつまで続ける気か


 
 
# ASEAN #中国・台湾 #社説
2023/9/9 2:00
 
ASEANとの首脳会議で発言する中国の李強首相㊨。3月に就任後、国際会議に初めて出席した(6日、ジャカルタ)=ロイター
7日までインドネシアで開いた東南アジア諸国連合ASEAN)関連の首脳会議は、南シナ海での中国の強引な海洋進出に改めて懸念の声が相次いだ。中国は法的な正当性を欠くにもかかわらず、同海で実効支配を強めるための威圧行動をやめない。力をいくら誇示しても、近隣国の信頼は得られないと理解すべきだ。

最終日は中国や日本、米国など18カ国が東アジア首脳会議を開いた。議長声明は南シナ海について「特に最近の状況に鑑みて」と前置きし「緊張を高めるような行動の自制の必要性」を訴えた。

名指しはしなかったものの、矛先を中国に向けたのは明白だ。

8月上旬、航行中のフィリピン軍の補給船に中国海警局の艦船が放水銃を使って妨害した。同下旬には、南シナ海の大半や台湾などを自国領だと示す最新の「標準地図」を公表し、関係国から反発を招いた。南シナ海ではフィリピンやベトナム、マレーシア、ブルネイ、台湾が領有権を唱える。

独自の境界線「九段線」を示し、南シナ海全域に主権が及ぶと主張する中国は、埋め立てや軍事施設の建設を進め、海上で危険な行為を繰り返す。脅威を深刻にとらえたフィリピンの提訴を受けて、2016年に国際的な仲裁裁判所が司法判断を下し、中国の主張は「法的根拠がない」と断じた。

論拠とした国際海洋法条約は中国も締結し、判決に従う義務がある。首脳会議でもASEANの大半が国際法の順守を呼びかけたのは当然だ。ところが中国は考慮するそぶりすら見せない。

中国の李強首相は東京電力福島第1原子力発電所の処理水を「核汚染水」と呼び、日本の海洋放出を非難した。放出は中国も加盟する国際原子力機関IAEA)が科学的に問題ないと結論づけた。なのに全く耳を貸そうとしない態度は南シナ海問題と共通する。

ASEANは日本の対応に理解を示し、中国による日本産水産物の全面禁輸に同調する動きもない。むしろ中国の理不尽な措置を際立たせる結果となった。

岸田文雄首相が禁輸を「突出した行動」と表現し、異常さを訴えたのは評価できる。日本は沖縄県尖閣諸島周辺で南シナ海と同様の挑発にさらされる。12月には東京でASEANと友好協力50周年の特別首脳会議が控える。中国の覇権主義的な脅威に直面する同士の連携をさらに深めたい。