#ビッグモーター不正 #社説
2023/9/9 2:00
記者会見に臨む損害保険ジャパンの白川儀一社長(左)とSOMPOホールディングスの桜田謙悟会長(8日、東京都新宿区)
損害保険大手の損害保険ジャパンは8日、中古車販売大手ビッグモーター(東京・港)の保険金不正請求の疑いを知りながら、同社との取引を2022年7月に再開した事実を明らかにした。白川儀一社長は引責辞任する。不正をただすべき立場の損保会社が役割を果たさず、ビッグモーターの悪事を看過した罪は重い。
損保会社は事故を起こした契約者の車をビッグモーターの整備工場に紹介する見返りに、自動車損害賠償責任保険(自賠責)の契約を獲得していた。ビッグモーターによる修理費用の水増し請求の疑いから損保大手4社は事故車の紹介を止めたが、損保ジャパンだけが22年7月に再開した。
親会社のSOMPOホールディングス(HD)は8日、損保ジャパン社長が主導して取引を再開した経緯を公表した。再発防止策の徹底を条件にしたが、ビッグモーターとの関係に配慮し不正に関する追加調査は見送った。あきれた対応と言わざるを得ない。
損害保険の契約者は損保会社のチェック機能を頼りに保険料などの支払いに応じている。損保会社が不正に目をつぶっていては、契約者と損保会社との信頼は土台から揺らいでしまう。まずはビッグモーターの不正請求で本来不必要な負担を被った契約者への補償を最優先に進めるべきだ。
白川氏は「軽率な判断で深く反省している」と語り、社長を辞任する意向を表明した。大口取引先との関係や目先の収益を偏重し、法令順守の意識を欠いた判断は経営者として不適切だ。
社長が主導した判断とはいえ、持ち株会社のチェックを含めけん制機能が働かなかったのか疑問も残る。SOMPOHDが設置した外部弁護士による調査委員会は事実関係を調査中で、金融庁は損保ジャパンに立ち入り検査を通知した。徹底的な解明を望みたい。
損保ジャパン以外の大手損保もビッグモーターに出向者を送るなど親密な関係にあった。緩んだもたれ合いを断つべきだ。