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2023/9/21 2:00
岸田文雄首相は一般討論演説で国連改革の早期実現を訴えた=ロイター
国連総会で193の加盟国の首脳や閣僚による一般討論演説が始まった。国連は安全保障理事会の常任理事国として拒否権を持つロシアの専横で機能不全が続き、現状では国連憲章が掲げる「国際の平和と安全の維持」に役割を果たしているとは到底言えない。
2025年の創設80周年の節目を前に、安保理を含む国連改革を前進させるときだ。岸田文雄首相には改革を先導するリーダーシップを発揮してもらいたい。
安保理はこれまでウクライナ戦争に有効な対応策を示せてこなかった。その形骸化を改めて象徴したのが、ロシアのプーチン大統領と北朝鮮の金正恩総書記がロシア極東での会談で話し合った軍事協力である。
安保理は全ての加盟国に核開発を進める北朝鮮との兵器取引を禁じる制裁決議を採択している。ロ朝の軍事協力が具体化すれば、制裁違反の可能性がある。過去に決議に賛成してきたロシアの態度は無責任のそしりを免れない。
安保理は米英仏と中国、ロシアの常任理事国5カ国と、任期2年の非常任理事国10カ国でつくる。日本は来年まで非常任理事国を務めている。安保理の議論に主体的に関与できるこのタイミングを生かすべきだ。
岸田首相は一般討論演説で「現在の世界を反映した安保理が必要だ。具体的な行動に移る機会が今だ」と述べ、常任、非常任理事国双方の拡大を唱えた。バイデン米大統領が足並みをそろえたのも心強い。
改革の実現には加盟国の3分の2と常任理事国全ての賛成による国連憲章の改正が必要になる。世界の分断が極まる状況でハードルは高い。
日本はインド、ブラジル、ドイツの4カ国(G4)の枠組みで安保理改革に取り組んできた。賛同する国々の輪をどう広げるか本腰を入れて考えなければならない。
加盟国の4分の1を占める大票田アフリカは国際社会でその力に見合った発言権を求めている。首相が演説で、アフリカの「代表性の向上」を支持したのは適切だ。双方にプラスとなる改革の具体案を検討していいのではないか。
昨年からは安保理で拒否権を使った国にその理由の説明を国連総会で求める取り組みが始まった。拒否権の行使のあり方についてさらに議論が深まり、国連の機能強化に資するよう期待したい。