バンブーズブログ

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[社説]ニジェール政変を放置するな


 
 
#社説 #オピニオン
2023/8/1 2:00
 
ニジェールでクーデターを起こした大統領警護隊のチアニ将軍(28日、ニアメー)=ロイター
西アフリカのニジェールで大統領の警護隊がバズム大統領を拘束し、軍事政権の発足を発表した。元首への就任を宣言したチアニ将軍はすみやかにバズム氏を解放し、違法な手段で握った権力を返すべきだ。アフリカで相次いで「法の支配」が失われる政変を国際社会は放置してはならない。

国連の安全保障理事会がクーデターを非難し、欧州連合EU)や旧宗主国フランスが支援の停止を発表した。当然の反応である。西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)など周辺国による仲介努力に期待したい。少なくとも短期的には、援助の凍結で庶民の生活が直撃を受ける。人道面への目配りも忘れてはならない。

ニジェールが位置するサハラ砂漠南縁の地域は政治情勢が極めて不安定だ。2020年以降、隣国マリ、ブルキナファソでもクーデターが起きた。バズム氏は民主的な文民間の政権移行で権力を握ったニジェール初の指導者で、イスラム過激主義勢力と戦う欧米の重要なパートナーだった。

チアニ将軍はバズム氏の過激派対策の失敗を批判する。だが、身勝手な行動によって国際的な対テロ支援を失い、むしろ国内の暴力が広がる危険を自覚すべきだ。

ロシアの動きも気になる。クーデター支持のデモ参加者はロシア国旗を手にしていたとされる。軍事政権がロシア民間軍事会社ワグネルを招き入れたマリの先例が繰り返される恐れがある。

アフリカの混乱は民主主義や市場経済による成長の果実を示すことができなかった過去の支援戦略の失敗を示す。サハラ以南は気候変動や食料・エネルギー危機で今後、さらに社会が不安定化することが懸念される。

アフリカにおける米国や旧宗主国の影響力の衰えは否定できない。岸田文雄首相は今春に歴訪したアフリカを「ともに成長するパートナー」と位置づけた。価値を共有する同盟国は民主主義制度の確立など一過性でない持続的な支援で連携を強める必要がある。