バンブーズブログ

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[社説]予備費のずさんさは目に余る


 
 
#社説 #オピニオン #新型コロナ
2023/9/21 2:00
 
ワクチン接種の体制を整えるとして認められた予備費の一部がコロナ治療薬の確保に転用されていた(21年8月)
会計検査院新型コロナウイルス対策へ2020〜21年度に国が用意した予備費約12兆6千億円がどのように使われたかを調べた結果について公表した。緊急をうたって予備費を充てた事業のうち3割が年度内に執行されず、全額を翌年度に繰り越していた。趣旨を逸脱した扱い方は目に余る。

予備費は自然災害など不測の事態に備え、使途を定めず国の予算に盛り込まれる。いざ使うときは国会の議決を経ず、閣議だけで使い道を決められる例外的な国の歳出だ。本来なら普通の予算以上に厳格に扱わねばならない。

ところが、実態はあまりにずさんだ。会計検査院によると、予備費の使用を閣議で認められたにもかかわらず、すべて翌年度に繰り越したものが6府省の18事業に上った。調査対象になった58事業の3割に相当し、金額ベースで3兆7千億円余りに達する。

急いで執行する気があったのか疑わしいケースもある。内閣府厚生労働省は年度末まで10日足らずのタイミングで、240日や12カ月かけて使う想定で女性支援や自殺防止の事業に要る予備費を積算していた。これらは結局、翌年度に全額を繰り越した。

ワクチン接種の体制を整えるとして認められた予備費は一部がコロナ治療薬の確保に転用されていた。こうした転用や融通は7件見つかった。普通の予算なら問題ないとしても、緊急をうたって例外的に認められた予備費をほかの政策に振り向けるのはおかしい。

コロナ禍以前はおおむね年数千億円の予備費を用意していたが、近年は年5兆〜10兆円規模に膨らんだ。物価高やウクライナを冠した予備費も出てきた。こんなずさんな扱い方では、巨額の予備費を安心して政府に任せられない。

丁寧な情報開示も欠かせない。政府は従来、既存の予算と混ぜてしまうため予備費だけを取り出して追跡できないと説明してきた。今回の調査で明らかになった管理記録を伏せていたことになる。不誠実な姿勢を反省すべきだ。