バンブーズブログ

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[社説]米車労使は未来見た議論を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/25 2:00
 
UAWは初となる一斉ストライキに突入した(22日、米ミシガン州バートン)=ロイター
全米自動車労組UAW)によるストライキが波紋を広げている。UAWが求めるインフレの救済措置や格差解消は理解できる部分もあるが、大幅な賃上げが実現すれば米自動車産業の弱体化につながり、労働者にも不利益となる。労使で議論を尽くし、現実的な妥協点を見いだしてもらいたい。

UAWゼネラル・モーターズGM)など「ビッグスリー」と呼ばれた3社に対して一斉にストを実行するのは初めて。4年に1度の労使交渉が15日に決裂し、22日にはUAW側がストの対象となる拠点を拡大した。一部で歩み寄りも伝えられるが、今のところ事態収拾の出口は見えない。

UAWは36%分の賃上げのほか、物価上昇に対応する費用の復活や年金制度の改善を求める。現状のインフレを鑑みれば経営側は一定の妥協を求められるだろう。

論点のひとつが、従業員の間に存在する賃金格差の解消だ。米3社が経営難に陥った07年に導入された制度で、それ以降に入社した社員は賃金水準が低い。

UAWはこの2階層の賃金制度の撤廃も要求している。格差の改善は米大統領選でも論点になるとみられる社会課題であり、経営側は対応が求められる。

とはいえ、UAW側の要求をすべてのんだ場合、今後4年で最大60億ドル(約9000億円)も人件費が上昇するという試算がある。電気自動車(EV)への投資が求められる局面では重い負担だ。

GMなどが09年に経営破綻した背景には、日本企業などの米工場と比べて突出して高い人件費が重荷となった教訓もある。

EVシフトに直面する自動車業界では米テスラなど新興勢や中国勢が躍進している。人件費増の反動で成長投資を怠れば同じ失敗を繰り返しかねない。他業界に波及すればインフレを加速させる原因にもなりうる。

自動車業界の変革期で起きる労使間の摩擦は、日本勢も対岸の出来事ではない。労使が協調して未来に向かうことを期待したい。