バンブーズブログ

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[社説]習近平政権は中国経済の苦境を隠すな


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/26 2:00
 
中国では若者の失業が切実な問題になっている(北京)=AP
中国経済の実態はいわれている以上に悪いのではないか。そう思われても仕方がない。習近平政権が強める経済や社会にかかわる情報の統制は、自分で自分の首を絞めるだけだ。

中国当局は年齢層で分けた失業率の公表を7月分から停止した。統計を整備するための一時的な措置と説明しているが、再開のめどは立っていない。

中国では、若者の失業が切実な問題になっている。

16〜24歳の失業率は、最後の発表となった2023年6月に21.3%に達した。大学生の就職難は厳しさを増している。実際の若年失業率はもっと高いはずだ、と多くの専門家はみる。

そうしたなかで、公表そのものを突然やめてしまった。都合の悪い数字を隠そうとしていると疑われるのは当然だ。

若年失業率だけではない。例えば、亡くなった人を火葬した件数は22年10〜12月分から公表しなくなった。

習政権が22年末に新型コロナウイルスを封じ込める「ゼロコロナ政策」を緩め、死者は急増したとみられる。何の説明もなく火葬件数の公表を見送ったのは、死者数が表に出せないほど多かったからだと考えざるを得ない。

中国経済は今年、ゼロコロナ政策の終了で急回復すると期待されていた。実際は不動産不況が景気の足を引っ張り、デフレに陥るリスクすら語られている。

人びとの不満は高まる一方だが、習政権は打つ手を欠く。

地方政府は土地使用料の収入が減り、財政の悪化が深刻だ。米中金利差を背景に人民元安が進み、中央銀行中国人民銀行は大胆な金融緩和に踏み込みにくい。9月には政策金利を据え置いた。

相次ぐ統計の公表停止は、社会不安をおそれる習政権の焦りの裏返しともとれる。

先の20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、習氏に代わって出席した李強首相が「中国経済は良い方向に向かっている」と強調した。しかし情報の透明性を欠いたままでは、いくら「大丈夫だ」と訴えても説得力がない。

もともと中国の統計には、当局が都合良く操作しているとの疑惑がつきまとってきた。統計の公表を恣意的に止めるのはこうした不信をいっそう強める。それが海外からの投資を減らす要因になるのは言うまでもない。