バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]中国経済の回復力の弱さが心配だ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/6/18 2:00
中国では不動産の販売が振るわない(山西省太原市、1月)
需要不足からデフレに陥るリスクさえ語られ始めた。「ゼロコロナ政策」を終えた中国経済の回復力が弱い。減速する世界経済を下押ししないか気がかりだ。

新型コロナウイルス禍から抜け出した中国経済が息を吹き返し、世界経済をけん引する――。年初に膨らんだそんな期待はいまや風前のともしびだ。

5月の主な経済統計は、どれも力強さに欠ける内容だった。コロナの混乱が収まったあと、中国経済が元の成長軌道に戻れていない現状を映し出す。

象徴的なのは工業生産だ。前年同月に比べ3.5%の増加にとどまった。伸び率は4月よりおよそ2ポイント縮小した。

2022年はコロナを抑え込む都市封鎖を実施し、企業の生産活動が深刻な打撃を受けた。23年はその反動で生産が一気に回復してもおかしくないが、今のところそうはなっていない。

背景には、関連産業を含めると中国の国内総生産GDP)の3割を占めるといわれる不動産業の不振がある。

5月は主要70都市のうち、24都市で新築住宅の販売価格が前月より下がった。4月の7都市から3倍以上に増え、住宅需要の落ち込みは全国に広がりつつある。

不動産の購入が減れば、家電や家具といった関連商品の売れ行きが鈍くなる。自動車の販売も依然ふるわない。

雇用の改善は遅れている。5月の失業率は5.2%だった。16〜24歳に限れば20%を超す。将来への不安がぬぐえず、旅行や飲食を除けば消費が勢いを取り戻す兆しはない。

需要不足が続くと、物価は上がりにくくなる。消費者物価指数(CPI)はかろうじて前年同月比でプラスを保っているが、いつマイナスに沈んでもおかしくない。中国人民銀行中央銀行)はデフレを防ぐため、近く事実上の政策金利を引き下げるとの観測が強まっている。

一方、地方政府の債務問題は深刻で、財政出動の余地は乏しい。本来なら民間の活力を引き出すべきなのに、習近平(シー・ジンピン)政権が国有企業を優遇する姿勢を変えないのは残念だ。

7月には改正反スパイ法が施行される。外資の力を積極的に取り込まなければならないときに、中国で働く外国人を不安に陥れる措置を取るのは理解に苦しむ。