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2023/8/19 2:00
中国恒大集団は米国で破産申請をした=ロイター
放っておけば、中国発の世界的な金融不安が起きかねない。不動産大手の中国恒大集団が米国で破産を申請した。習近平政権が構造改革を怠ってきたツケであり、問題の先送りはもう許されない。
恒大は米ニューヨーク州の裁判所に連邦破産法第15条の適用を申請した。米国内の資産を債権者に差し押さえられないようにし、難航している外貨建て債務の再編交渉を有利に進めるねらいがあるとみられる。
恒大の経営危機が表面化したのは2021年の夏だ。負債総額は22年末で2兆4千億元(約48兆円)にのぼる。このうち外貨建てはごく一部にすぎず、今回の破産申請で経営の立て直しにメドがつくわけではない。
抜本的な再建には、中国国内での法的整理も必要になる。しかし、中国政府は幅広い取引先に影響が出る荒療治に及び腰だ。
手をこまねいているうちに、不動産会社の経営不安は恒大以外にも広がる。最大手の碧桂園控股(カントリー・ガーデン・ホールディングス)は、23年1〜6月期の最終損益が500億元前後の赤字になったもようだと発表した。中堅の遠洋集団控股も資金繰りの悪化が表面化している。
背景には、深刻な不動産不況がある。7月は主要70都市のうち49都市で、新築住宅の価格が前の月より下落した。
中国の国内総生産(GDP)に占める不動産業の割合は、関連産業も含めれば3割に達するといわれる。住宅が売れなくなると、家電や家具など耐久消費財の販売がふるわなくなるだけではない。マンションの建設が止まり、建材などの生産も落ち込む。
不動産不況を起点とする需要不足が、中国経済に重くのしかかる。7月の消費者物価指数(CPI)は前年同月に比べ0.3%下落し、2年5カ月ぶりにマイナスに沈んだ。本格的なデフレに陥る懸念は強まっている。
人口減が始まり、不動産頼みの経済がやがて行き詰まるのは目に見えていた。
新たな成長のエンジンを育てなければならないときに、習政権が民営企業の締めつけを強めるのは理解に苦しむ。若年失業率の発表を突如停止するなど、透明性の低い政策運営も相変わらずだ。