バンブーズブログ

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[社説]国は水俣病の広範な救済を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/29 2:00
 
国には水俣病の広範な救済が求められている(27日、大阪地裁前で勝訴を知らせる関係者ら)
水俣病特別措置法の救済措置の対象から外れた未認定患者らが損害賠償を求めた集団訴訟で、大阪地裁が原告全員を水俣病だと認定する判決を下した。

健康被害に苦しむ人の救済の道を広げる司法判断である。国や自治体はさらに広範な救済に向けて知恵を絞るときだ。

2009年施行の特措法は、国の基準で水俣病患者と認定されていなくても、居住地域や期間など一定の基準を満たすことを条件に療養費などを支給する仕組みだ。原告の多くは日常的に不知火海の魚介類を食べていたというが、特措法による「線引き」に照らせば対象外だった。

大阪地裁は27日の判決で、特措法の対象外でも不知火海の魚介類を継続して多く食べていれば、メチル水銀の摂取があったと認められると判断。128人の原告全員を患者と認定し、国と熊本県、原因企業のチッソに対して賠償を命じた。被害実態を柔軟にとらえた判断を評価したい。

同種の集団訴訟熊本地裁などでも争われている。今回の大阪の判断が、各地の審理に影響を与える可能性もある。

特措法はもともと、厳しすぎるとされてきた国の患者認定基準に当てはまらない人を救済するとして制定された。だが申請できる期間が限定されるなど、対象が狭いとの指摘が以前からあった。国の基準のハードルの高さに異を唱える司法判断も、最高裁を含めて過去に出ている。

にもかかわらず、国からは被害者を広く救済するという姿勢がうかがえないのが実情だ。

水俣病では風評被害を恐れて患者の隠蔽などが起きた結果、被害者の総数をはじめ事態の全容がいまだに分かっていない。特措法は政府が健康調査を行うと定めているものの、未実施のままだ。

水俣病の公式確認から67年となり、被害者の高齢化も進む。政府は他の訴訟や上級審の結論を待つのではなく、広範な救済策の検討に早急に着手すべきである。