バンブーズブログ

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[社説]「ジャニーズ」が企業に問う人権の重み


 
 
#ジャニーズ性加害問題 #社説
2023/10/4 2:00
 
メディアも含めて人権問題の重大さを認識する必要がある(2日午後、都内でのジャニーズ事務所の記者会見)=共同
ジャニーズ事務所が2日、創業者による性加害問題からの立て直し策を発表した。所属タレントのマネジメントを担当する新会社を設立し、同事務所は被害者への補償を終えた後に解散する。一刻も早く救済に動いてほしい。

今回の性加害問題はジャニーズだけでなく、広くエンターテインメント産業や、それをとりまく企業に人権問題を突きつけている。芸能界は未成年を含む労働者を、大きな権力を持つ経営者やプロデューサーらが使っている構図だ。立場の差が人権侵害を生みやすい土壌はもともとある。

2日発表の案では、ジャニーズ事務所の社名を17日付で変更し、1カ月以内に立ち上げる新会社の社名もファンクラブの公募で決めるという。これだけでは不十分で説得力に欠ける。

現在の事務所と新会社がまったく別の組織になるよう、資本構成や企業統治の仕組みも整える必要がある。そうでなければ、信頼回復への姿勢が疑われるだけだ。

ジャニーズ事務所は所属タレントとの不明瞭な契約関係や、退所者への活動妨害の可能性も指摘されてきた。新会社はこうした問題にも向き合ってほしい。

問題の発覚後、所属タレントの起用を止める企業が後を絶たない。人権侵害のあった企業と取引すれば、ビジネスで最も重要な信頼を傷つける。タレントの起用停止は企業の社会的責任を果たす意味合いもあるが、思いをいたすべき点はそれにとどまらない。

メディアを含む企業がステークホルダー(利害関係者)として問題に切り込み、被害を早く止める手立てはなかったか。自らに改めて問う必要があるだろう。

国際的な視点に立てば、ジャニーズ問題は特定の業界のできごととは決して言えない。

国連の「ビジネスと人権」に関する作業部会は8月の日本企業に関する報告書で、女性や性的少数者、障害者、外国人などの人権保護に懸念を表明した。そのうえで、ジャニーズをはじめとするエンターテインメント業界だけでなく、すべての日本企業に人権問題への対処を求めた。

株主の存在も意識すべきだ。欧米投資家の間では、ジャニーズ問題を契機に日本企業の人権意識の乏しさに目を向ける動きがある。

「人」を尊重する公正なビジネスでなければ社会に受け入れられない。この教訓を胸に刻みたい。