バンブーズブログ

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[社説]好循環へ消費と海外の注視を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/4 2:00
 
個人消費の現場では消費者の「値上げ疲れ」に懸念の声も(都内のスーパー)
日銀が発表した9月の全国企業短期経済観測調査(短観)は大企業の景況感を示す業況判断指数(DI)の上昇が続き、賃金や設備投資を軸とする内需主導の成長にも期待が持てる結果となった。

内外のリスク要因を注視し、好循環の兆しを絶やさぬよう万全を期す必要がある。

業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」とした割合を差し引いた値。大企業は製造業、非製造業ともに6月の前回調査から4ポイント上向いた。

製造業は供給制約が和らいだ自動車のほか、コスト高の価格転嫁が続く紙・パルプなど幅広い業種でDIが上昇した。非製造業は6期連続で改善し、DIの水準は約32年ぶりの高さとなった。訪日外国人の消費拡大などで宿泊・飲食や小売りの好調が目立った。

賃金と設備投資にも上向く兆しが強まっている。雇用人員の過不足をみるDIでは、大企業非製造業の人手不足の深刻さが約31年半ぶりの水準に達した。

2023年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比13.0%増と高い伸びを保ち、前回調査から上方修正された。脱炭素関連の投資意欲が旺盛だという。こうした芽を大切にしたい。

だが、不安材料も多い。物価上昇の勢いほど所得が伸びず、個人消費には腰折れ懸念が残る。積極的な賃上げの継続が消費底上げの大前提だといえる。

円安の「光と影」には要注意だ。23年度の企業の想定為替レートは1ドル=135円台で、現状の円安を十分に織り込んでいない。

輸出型の大企業の収益には上振れ余地が生じる。半面、その恩恵が賃上げなどを通じて経済全体に行き渡らなければ、円安が原油高騰を背景にした物価高に拍車をかけ、多くの個人の所得や内需型の中小企業の収益をむしばむ。

海外経済の減速懸念も大きい。中国が失速すれば、輸出企業の収益が下押しされ、円安効果を減殺しかねない。政府も企業もリスクへの警戒を怠らないでほしい。