バンブーズブログ

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[社説]いじめ最多、自治体も関与を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/20 2:00
 
文部科学省文化庁スポーツ庁の看板
全国の小中高校などで2022年度に認知されたいじめの件数が前年度から1割増の68万件余りに上り、過去最多となったことが文部科学省の調査でわかった。

13年のいじめ防止対策推進法の施行から10年が経過した。この間、教員の長時間労働が社会問題化し、業務削減は喫緊の課題だ。学校や教育委員会だけに対応を委ねるのではなく、自治体の首長部局の積極的な関与や支援が必要だ。

認知件数が増加したのは、軽微な事案も積極的に把握する努力を重ねてきたからだ。だが、看過できないのは、児童生徒の心身に深刻な影響を及ぼす「重大事態」も923件と最多となったことだ。

重大事態の4割弱は、深刻な被害に至るまで学校側が十分に対応できなかった。ネット上でのいじめも増加し、教員が端緒を把握しにくいという事情もある。

参考になるのが大阪府寝屋川市の実践だ。市の公式アプリを経由して、いじめられている本人や保護者、問題行動を把握した周囲の生徒たちも、危機管理などを所管する首長部局に直接、情報を提供することができる。

担当職員が直ちに関係者に事情聴取し早期収拾に乗り出す。いじめを人権行政の課題ととらえ首長部門の責任で解決する試みだ。教員の負担を軽減する効果もある。

教師の指導の役割を軽視すべきではない。従来の教育的なアプローチも残しつつ、問題解決の選択肢を増やす視点が大切だ。

こども家庭庁も、首長部局にいじめ相談の窓口を設置するモデル事業を始めた。この施策で得られた知見を広く現場で共有したい。

自治体の支援に加え、弁護士などの指導、助言を踏まえた法的な対応も課題だ。学校教育法には、いじめなどの加害者に出席停止を命じる規定がある。しかし、近年、ほとんど実施されていない。

もちろん、義務教育段階では慎重な対応が必要だが、学校にも社会一般の法規範が適用される。そのことを理解させるのも教育の役割だろう。