バンブーズブログ

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[社説]米大統領訪問で中東の不安定化を防げ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/20 2:00
 
バイデン米大統領(写真㊨)はイスラエルのネタニヤフ首相に連帯の意を示しつつ、侵攻作戦で自制を求めた=AP
バイデン米大統領イスラエルを訪れ、ネタニヤフ首相と会談した。パレスチナイスラム組織ハマスの攻撃を受けたイスラエルへの支援を約束しつつ、ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザへの地上侵攻作戦に一定の自制を求めた。

米国は歴史的に中東の安定に大きく貢献してきたが、近年は影響力の低下が否めない。今回の訪問が衝突のエスカレーションを食い止め、将来の中東和平への道筋を再び切り開くことにつながるよう期待したい。

バイデン氏は訪問時の演説で、非戦闘員への攻撃禁止などを定めた戦時国際法の順守をイスラエルに求めた。地上侵攻が民間人の多数の犠牲を出すことのないように警鐘を鳴らすものだ。際限なき暴力の応酬が制御不能の事態を招かないようにするためにも、当然の要請だ。

封鎖状態にあるガザへの支援物資の搬入で、イスラエル、エジプトの協力を取り付けたのを評価する。支援が円滑に進むよう最大限の努力を続けてほしい。

もっとも、混乱の根本にあるパレスチナ問題に目を背けたままでは中東の安定はおぼつかない。バイデン氏が演説で、将来の独立したパレスチナ国家とイスラエルの「2国家共存」の和平の原則を維持すると表明したのを歓迎する。

トランプ前米大統領は過度なイスラエル寄りの政策を推進し、パレスチナからの信頼を失った。米国が公正な仲介役として指導力を発揮するには、パレスチナからの信頼回復が前提となる。

その意味で、今回の訪問にあわせて予定していたヨルダンでのパレスチナ自治政府アッバス議長との会談が見送られたのは残念だ。バイデン氏のイスラエル訪問の直前にガザで病院の爆発がおき、約500人が死亡した。パレスチナ側が喪に服すとして先送りとなった経緯があるものの、再訪問の早期実現が望ましい。

バイデン氏はイスラエルへの支援策を盛った予算を議会に求めると述べた。ただ、その予算を審議する連邦議会は野党・共和党の内紛で下院議長の不在が長引き、このままでは成立させられない。

ロシアへの反攻を続けるウクライナ向けも含めた支援が遅れかねない状況を憂慮する。共和党は米国が世界の安定に大きな責任を負っていることを自覚し、事態を早く収拾させるべきだ。