#イスラエル・ハマス衝突 #社説
2023/10/17 2:00
パレスチナのガザ地区で14日、イスラエルの空爆でがれきとなった建物を見つめる子供たち=AP
パレスチナのイスラム組織ハマスによるテロ攻撃は、空爆によるイスラエルの反撃で多数の民間人を巻き込む衝突に発展した。イスラエルはハマスが支配するガザ地区への侵攻を準備している。衝突が制御不能に陥ることをふせぎ、人道危機を回避するため関係国は力を尽くす必要がある。
どんな事情があれ、民間人を殺害し、人質を連れ去ったハマスの戦術は正当化されない。ハマスはガザ住民にイスラエルの退避要請を拒否するよう呼びかけ、道路をふさいで妨害した。人命軽視はとうてい受け入れられない。
ガザ侵攻を前に電力や水、燃料の供給を停止したイスラエルの反応もガザの民間人に大きな犠牲をもたらしつつある。空爆によるパレスチナ人の死者は、ハマス攻撃によるイスラエル人の死者数を上回った。
短時間での退避要請は現実的でなく「人道配慮のアリバイづくり」と批判されてもしかたない。世界保健機関(WHO)は「北部の病院にいる病人や負傷者に退避を求めるのは死刑宣告にひとしい」と批判した。
イスラエルは軍事インフラ破壊や人質の奪還など作戦の目標を明確に示す必要がある。国際法を守り、たとえ困難でも戦闘員と民間人を区別することはイスラエル軍の義務だ。一般人の犠牲増大は憎悪の連鎖を招き、ハマスの術中にはまることを理解すべきだ。
国際社会が急ぐべきは支援物資を届け民間人を退避させるための「人道回廊」の設置である。イスラエルへの影響力を持つ欧米と、ハマスに影響力をもつイラン、カタール、双方にパイプがあるエジプトなどが連携して危機を打開する必要がある。
難民の受け入れ負担からガザとの国境開放に慎重なエジプトを経済的に支えるなど、日本も役割を探るべきだ。エジプトはスーダンからの難民流入で、すでに大きな負担を強いられている。
危機の再燃は、パレスチナ問題を放置してきた国際社会にも責任がある。衝突のさなかでも問題解決に向けた議論を始めるべきだ。パレスチナを置き去りにしないというメッセージの発信は緊張緩和につながる。
日本も経済的な自立の後押しなどで中東和平の前進に一定の貢献をしてきた。イスラエルとパレスチナが平和裏に共存する以外に永続的な解決の道はない。