バンブーズブログ

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[社説]仏像返還への韓国の判決を歓迎する


 
 
#社説 #オピニオン
2023/10/28 2:00
 
韓国最高裁の判決後、メディアの取材に応じる同国の浮石寺関係者(26日、ソウル)=共同
日韓に刺さったトゲがまた一つとれる。2012年に長崎県対馬市の観音寺から韓国の窃盗団に盗まれ、同国に持ち込まれた仏像をめぐる訴訟で、韓国最高裁は所有権を主張する韓国の寺の訴えを退ける判決をくだした。

仏像は長崎県指定有形文化財の「観世音菩薩坐像」で、窃盗団の摘発後に押収された。韓国政府も判決を尊重するとしている。日本に返還される見通しで、両国関係も後押しする判決を歓迎する。

韓国の寺は、仏像がかつて倭寇(わこう)に略奪されたものだと主張し、引き渡しを求めた。一審判決は原告の主張を認めたが、二審判決は観音寺が20年を超えて仏像を占有してきたことを挙げ、民法を判断基準に同寺の所有権を認めた。最高裁もこれを支持した。

盗難から11年もかかったのは、遅すぎたと言わざるを得ないが、その背景には日韓にまたがる複雑な歴史があるのも無視できない。

朝鮮半島との交流を重ねてきた対馬には朝鮮半島由来の文化財が数多く残る。日本に渡った経緯は略奪のほか、日本側が購入したり、仏教を排斥した朝鮮王朝時代に合法的に譲り受けたりしたなどさまざまな指摘がある。

韓国最高裁は判決で、14世紀に今回の仏像をつくり所有していたとされる寺と原告の寺が同一であるとは認定した。隣国の国民感情に心をくばる姿勢も大切だ。

民主党政権下では、日本統治時代に日本に持ち込まれた「朝鮮王室儀軌(ぎき)」などの朝鮮半島由来の図書を韓国側に引き渡した。日本は仏教を含む文化を朝鮮半島から受け入れてきた歴史があり、互いの文化財を尊重する取り組みを深めるのは望ましい。

韓国最高裁は同じ26日に、著書「帝国の慰安婦」で名誉毀損罪に問われた朴裕河・世宗大学名誉教授について、有罪とした二審判決を破棄し、高裁に審理を差し戻した判断も注目される。

尹錫悦政権下で日韓関係の好転を象徴するような事例が相次ぐ。この流れを大事にしたい。