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2023/12/24 2:00
韓国国民の理解を得るには日韓両国の交流や協力の積み重ねが欠かせない(21日、ソウル) =AP
日本側には受け入れられない韓国司法の判断だ。それでも大局を見失ってはならず、日韓関係を着実に前に進めるときである。
韓国大法院(最高裁)が韓国人の元徴用工らが損害賠償を求めた2つの訴訟の上告審で、日本企業の上告を棄却した。この問題で最高裁が判断を下すのは5年ぶりで、日本企業に賠償を命じる判決がふたたび確定した。
日本政府や企業は1965年の日韓請求権協定で両国の財産や請求権問題が「完全かつ最終的に解決」されたとの立場だ。林芳正官房長官が極めて遺憾とし、韓国側に抗議したのは当然だろう。
判決は、不法な植民地支配下での反人道的な不法行為への慰謝料は請求権協定の範囲外とした。韓国では係争中の訴訟が最高裁を含めて数多く、この論理で同様の判決が相次ぐ恐れがある。将来、日本企業の資産が現金化されるリスクが残っていることを示した。
韓国政府が3月に発表した解決策は、韓国政府傘下の財団が判決金を肩代わりする方式だ。2018年の判決で勝訴した原告15人のうち4人が受け取りを拒み、財団が判決金を預ける「供託」も地方裁判所が受理していない。企業が実害を受ける現金化は何としても避けなければならない。
韓国政府は国民の幅広い理解を得る努力を尽くしてほしい。日本側も岸田文雄首相が5月に「多数の方々が大変苦しい思いをされたことに心が痛む思いだ」と発言したのを踏まえ、両国の経済団体が創設を決めた未来志向の基金を早急に前進させるべきだ。
北朝鮮の金正恩総書記は敵の挑発に核攻撃も辞さないと宣言している。対抗して日韓は北朝鮮ミサイルの探知情報を即時共有するシステムを稼働させた。徴用工問題などでこうした安全保障協力を遅らせる余裕はない。
日韓が力を合わせて共通利益を広げたい。両国関係の足腰を鍛える交流や協力の積み重ねが、ひいては民意に敏感な韓国司法の判断にも影響を及ぼしていくだろう。