#社説
2023/4/27 19:05
韓国は核保有を求める世論が強い。26日の共同記者会見後に握手する米韓両首脳(米ホワイトハウス)=AP
米国のバイデン大統領と韓国の尹錫悦大統領が米ワシントンで会談し、北朝鮮の核抑止の強化に向けた新たな協議体を設けることなどで合意した。日本の安全保障に大きくかかわる問題だけに米韓両国との連携を深め、地域の安定に導いていく必要がある。
会談では拡大抑止に関する「ワシントン宣言」を採択し、米軍の戦略原子力潜水艦を朝鮮半島に派遣することも決めた。バイデン氏は共同記者会見で、北朝鮮が核を使えば「いかなる政権でも終焉(しゅうえん)につながる」と韓国を守り抜く意志を明示した。
中台関係の緊張やロシアのウクライナ侵攻など軍事的な脅威が世界に広がるなかで、朝鮮半島への関与を強める米国の決断は歓迎できる。北朝鮮に対抗するための独自の核保有や戦術核の再配備を求める韓国世論も次第に落ち着いていくのではないか。
米韓同盟70年にあたり、尹氏は韓国大統領として12年ぶりに国賓として米国を訪れ、米議会で演説する機会も得た。アジアの民主主義国家で経済、軍事両面で力をもつ韓国を重視するバイデン政権の姿勢の表れだ。
米韓でつくる協議体は核に関する情報共有のほか、運用方針に韓国がある程度関与できる仕組みになるとみられる。アジアでは初めてで、北大西洋条約機構(NATO)が持つ米国との核共有への一歩になるか注視したい。
米国には日米韓3カ国の枠組みで同様の協議を探る動きがある。米韓の拡大抑止が新たな段階に入り、日米協議にも影響を及ぼすだろう。非核三原則がある日本は韓国と同一には論じられないが、抱えている課題や境遇は同じであり、国内論議につなげるべきだ。
バイデン氏は会談で、電気自動車(EV)への優遇税制から韓国車などを除外する措置や半導体の厳しい対中規制については韓国が求める見直しに応じなかった。
過剰な自国企業の保護は競争を阻害し、民主主義陣営の結束を乱しかねない。日韓は米国の同盟国として協力しつつも、主張すべきは臆せず主張する姿勢が必要だ。
尹氏は米紙インタビューで「100年前の歴史のせいで日本人がひざまずかなければならない、という考えを私は受け入れられない」と述べ、国内で物議を醸している。バイデン氏は会見で尹氏の「勇気」をたたえた。岸田文雄首相にも指導力を発揮してほしい。