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2023/11/5 19:00
楽天モバイルは「つながりにくい」との不満を払拭できるか
総務省が携帯電話向けに電波がつながりやすい「プラチナバンド」を、楽天グループ傘下の楽天モバイルに割り当てることを決めた。国民の共有財産である電波を新たに使うことになる楽天はサービスの向上を急ぐ必要がある。
プラチナバンドは電波の周波数帯の中でも遮蔽物を回り込みやすい性質を持つ。通話やデータ通信がつながりやすくなる。
楽天は2020年に携帯に本格参入したがこの周波数帯を持っておらず、ユーザーからは通信品質に関する不満が寄せられていた。楽天はプラチナバンドの利用を24年に始め、今後10年で1万局超の基地局を整備するという。
スマートフォンは今や生活に欠かせないインフラだ。安定した電波で誰もが安心してスマホのサービスを使える環境を提供してもらいたい。
楽天にはNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクに続く携帯の第4勢力としての役割が求められる。
これまでに政府主導の「官製値下げ」に続いて、楽天の参入が料金の引き下げに貢献した実績はある。一方で携帯市場の焦点は料金競争から、インターネットや金融との連携といった経済圏でのサービスに変わりつつある。
楽天はネット通販や金融サービスを手広く扱っている。ポイントは連携しているが、6月時点でのシェアは2%強にとどまる。ユーザーにとってメリットがわかりやすく、支持を得られるような新機軸が求められるところだ。
業績面ではいまだ携帯事業の赤字が重荷だ。プラチナバンドの活用で顧客満足度を高めて赤字を解消することが先決だ。その上で、携帯を通じたイノベーションの創出に貢献して欲しい。
楽天は完全仮想化と呼ばれるソフトウエア重視の携帯インフラの輸出も目指すという。早くから日本で携帯を普及させながら海外展開で失敗してきたドコモなど、先行する他社を出し抜くような取り組みにも期待したい。