バンブーズブログ

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[社説]博物館への寄付続く仕組みを


 
 
#社説 #オピニオン
2023/11/11 19:00
 
国立科学博物館クラウドファンディングは博物館の永続的な運営に問題を提起した
国立科学博物館が運営に必要な資金を募ったクラウドファンディング(CF)で、目標の1億円を上回る9億2千万円を集めた。

新型コロナウイルス禍による入館料収入の激減や光熱費の高騰などにより博物館活動の根幹である「資料・標本の収集・保管」が危機に直面している。日本の博物館全体にかかわる問題であり、永続的な運営には安定した財政基盤が欠かせない。今回のCFの成功を一過性でない継続的な寄付へとつなげたい。

電気代節約のため温湿度を管理すべき収蔵庫の空調を一時的に切った。棚に収まらない資料が廊下にあふれている。動植物や化石などの標本500万点超を所蔵する日本有数の総合博物館の窮状に5万7千人が寄付で応じた。圧倒的な館の知名度や工夫を凝らした返礼品が成果をあげたといえよう。

一方、日本博物館協会の調査で全国の博物館の収入のうち助成や寄付など外部資金は7%。米国の博物館の平均的な寄付の割合である37%を下回る。別の調査ではCFを活用する館も2%止まりで、88%が活用予定はないと答えた。

支援者への税制上の優遇制度もあるが、善意の寄付を増やせていない。最大の理由は館側の人員、知識やノウハウの不足だ。

米国の博物館は強固な会員制度に支えられ、収入の大半を寄付や助成でまかなう。スミソニアン協会は1万円強から数百万円まで年間の寄付金による区分を設け、高額寄付者に特別ディナーといった特典を用意する。会員制度はプロモーションやメディア戦略などのプロ集団が運営する。

英国の大英博物館は国の支援金を増額するとともに寄付獲得に費用を投じ、2022〜23年度は寄付総額を2倍に増やした。

専任人材による経営基盤がまだない日本では、国や自治体が公費で支えることが重要だ。さらに並行して、博物館が寄付を集めやすい制度を整えたり、資金調達に精通する人材を育成したりする後押しをすべきだ。