バンブーズブログ

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[社説]「年収の壁」は第3号制度の改革で解消を


 
 
#社説 #オピニオン
2023/9/22 19:05
 
厚生労働省は「年収の壁」の解消へ向けた年金制度改革の議論を始めた(21日、東京都内)
配偶者に扶養されるパート従業員が社会保険料負担を避けるために働く時間を抑える「年収の壁」の解消に向け、厚生労働省が年金制度改革の議論を始めた。

この問題の根本原因は専業主婦ら会社員に扶養される配偶者を優遇し、保険料負担なしで基礎年金をもらえるようにした第3号被保険者制度にある。共働きが主流になった社会の変化を踏まえ、同制度にメスを入れる改革が要る。

「年収の壁」対策を巡っては、岸田文雄首相が手取りの減少を防ぐための企業助成を10月にも始める考えを表明した。政府は助成金制度を当面の人手不足に対応するための一時的な措置と位置づけ、制度そのものの改革は別に行う方針を示している。

今回の議論はこの制度改革にあたり、社会保障審議会(厚労相の諮問機関)の年金部会で2024年末までにとりまとめる。

従業員数が100人超の企業で働く被扶養者は、週の勤務が20時間以上で月収が8万8000円(年収換算で約106万円)以上になると会社員の配偶者が入る社会保険の扶養対象から外れる。給与から社会保険料が天引きされ、年収が125万円以上になるまで手取りは適用前の水準を下回る。

報酬比例部分のある厚生年金に移ることで将来の年金が増える利点があるが、手取りの減少を避けるために就業時間を調整する人がいる。「106万円の壁」と呼ばれるもので働き方に中立な制度への移行が課題になっている。

厚労省は第3号被保険者制度の維持を前提に、パートの保険料負担を軽減する案を21日の年金部会に示した。①一律免除②複数の負担割合から選択③複数年かけて負担割合を上げる④収入の増加に応じて負担割合を上げる――の4つだ。保険料を軽減した場合の年金給付についても全額給付や一部減額など複数案を提示した。

委員からは「保険料を納める自営業者や単身者との公平性が課題だ」との指摘が相次いだが、もっともだ。国民の老後保障を厚くするために厚生年金の加入者を増やす改革の効果も損なう。

少額でも働いて収入を得たらそれに応じて保険料を納める。壁の問題は社会保険の原則を徹底することで解消すべきで、保険料免除という優遇拡大策は方向が逆ではないか。「負担なき給付」を認めた第3号被保険者制度の廃止を含めた改革を考えるべきだ。