バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]米中は世界経済の安定へ緊張緩和を探れ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/11/11 19:05
 
中国の何立峰副首相(左)と握手するイエレン米財務長官(9日、米西部サンフランシスコ)=ロイター
米国と中国の緊張緩和は世界経済の安定に欠かせない。両国が経済を手がかりに対話を重ね、関係改善の糸口を探り始めたことを歓迎したい。

バイデン米大統領と中国の習近平国家主席による首脳会談が15日に決まった。両者が会うのは2022年11月以来、1年ぶりだ。

これに先立ち中国の経済政策を担当する何立峰副首相が訪米し、イエレン米財務長官と10日までの2日間にわたって会談した。

2人による協議はイエレン氏が7月に訪中して以来だ。4カ月ほどの間に、米中の経済政策を統括する閣僚の相互訪問が実現した意義は大きい。

イエレン氏は会談で「米中の全面的な経済の分断は両国、そして世界の経済にとって壊滅的な結果をもたらす」と語った。

バイデン政権が2022年10月に軍事転用のおそれがある先端半導体の対中輸出規制を導入して以降、米中の経済をめぐる対立は激しさを増している。

中国は22年末に、レアアース(希土類)を使った高性能磁石に関する製造技術の輸出を禁止する検討を始めた。23年8月には半導体の素材となるガリウムなどの輸出規制に乗り出し、その影響は日本にも及ぶ。

10月にバイデン政権が半導体の輸出規制を強めると、中国はレアアースの輸出管理を強化して米国をけん制した。

このまま米中の制裁合戦が激化すれば、サプライチェーン(供給網)の分断が進み、世界経済への打撃は計り知れない。両国は対話を深め、まず対抗策の打ち合いに歯止めをかけるべきだ。

もちろん、力による現状変更を試みる中国に、ミサイルの精密誘導などに必要な最先端の半導体が渡るのは防がなければならない。中国への輸出規制はやむを得ない面が大きい。

バイデン政権は対中規制で「スモールヤード、ハイフェンス(小さな庭に高い柵)」の方針を掲げる。規制の対象を安全保障にかかわる最小限の範囲にとどめる考え方だ。米国にはこの方針をしっかり守ってもらいたい。

岸田文雄首相も15〜17日のアジア太平洋経済協力会議APEC)首脳会議にあわせて習氏との会談を調整している。対話こそ、東京電力福島第1原子力発電所の処理水問題や邦人拘束といった懸案の解決に向けた一歩である。