バンブーズブログ

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[社説]地域の安定へ日中韓首脳級会合を急げ


 
 
#社説 #オピニオン
2023/11/27 19:05
 
日中韓の思惑はそれぞれだ。26日、外相会合の会場に移動する(左から)上川外相、韓国の朴振外相、中国の王毅外相(韓国・釜山)=共同
日本、中国、韓国の外相が韓国・釜山でおよそ4年ぶりに会合を開いた。地域の主要国である3カ国の役割は緊迫する国際情勢の安定に欠かせない。重層的な対話の枠組みを築いていくべきだ。

焦点だった首脳級会合の日程については「なるべく早期で適切な時期の開催」へ作業を加速すると確認するにとどまった。議長国の韓国政府がめざす年内の開催は中国の都合で難しく、来年の早い時期で調整される見通しだ。開催を急いでほしい。

北朝鮮が米軍などの部隊や基地を監視するとして「軍事偵察衛星」を打ち上げた問題でも、日韓は静観する中国と一致した対応を打ちだせなかった。韓国側が調整していた晩さん会や共同記者会見も見送られ、日韓と中国の立場の違いがあちこちで姿を現した。

それでもウクライナや中東での危機のほか、北朝鮮とロシアの軍事協力が懸念される局面で日中韓の高官らが顔をそろえる意義はある。中国と向かい合って国際社会の懸念を伝えられるからだ。

中国は日米韓の連携を警戒している。日韓との外相会合に応じた背景に米国をけん制する狙いがあったのは明らかだ。一方で日米韓と中ロ朝のあいだで冷戦型の対立構図が深まる展開も中国の本意ではないとみられる。

2019年末を最後に途絶えている日中韓首脳級の会合が外交・安保戦略上も重みをもつ。日本政府は中国との対話再開の機運を生かし、韓国とともに早期の実現に力を尽くしてほしい。

3カ国は隣国として地域情勢に加え、貿易・投資や環境問題なども幅広く話し合える。共通の課題で知見を持ち寄り、実務的な協力を進めれば国益にかなう。

韓国が尹錫悦大統領のもとで日米との関係を立て直し、それが中国を対話の場に呼び込んだ面もある。中国に対して日韓は安保、経済両面で似た境遇にあり、声をそろえて責任ある行動をとるよう働きかけられる効果がある。

日韓外相会談では、韓国高裁が日本政府に元慰安婦への賠償を命じた判決に日本側が抗議し、韓国政府に適切な措置を講ずるよう求めた。韓国側は15年の両国政府間合意を尊重する立場を示した。

日本には到底受け入れられない判決だが、日本を重んじる尹政権を追い込むのは得策ではない。日韓関係を後戻りさせないために冷静に打開策を見いだしたい。