バンブーズブログ

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[社説]空港の人手不足の克服を


 
#社説 #オピニオン
2023/12/9 19:00
 
地上で業務にあたるグラハンスタッフが特に足りない(羽田空港
空港の人手人足が深刻だ。飛行機の誘導や貨物の積み下ろしをするグランドハンドリング(グラハン)と呼ばれる作業員や、乗客の手荷物検査などをする保安検査要員が特に足りない。

空港に関わる官民は自動化などを通じて作業の効率化を進め、インバウンド客などの円滑な受け入れ拡大につなげてほしい。

新型コロナ禍で一時は国境をこえる人流がほぼ止まったが、水際規制が段階的に緩和され、2022年末以降、入国者は尻上がりに増えている。国内の旅客の回復はさらに早く、今年度内にはコロナ前の水準に戻る見通しだ。

ANAホールディングス日本航空はコロナ禍でも運航乗務員や客室乗務員の雇用を維持したので、機上で働く人は足りている。

だがグラハン業務や保安検査は地元の会社に委託していることが多く、コロナ禍で削減した人員が戻ってこない。その結果、九州などの空港ではアジアの格安航空会社などの就航希望がなかなか実現しない例が実際にあるという。

待遇改善は欠かせないが、日本全体が人手不足のなかで、空港だけ充足したとしても、他分野の不足が深刻化するだけだ。自動化による生産性の向上や、航空会社をまたいだ柔軟な働き方などの創意工夫が必要だろう。

羽田空港などではパソコンなどを取り出さずに、手荷物検査ができるスマートレーンを航空各社が導入している。検査の効率が高まり、乗客にとっても待ち時間が減るなどメリットは大きい。手間のかかる貨物の積み下ろし業務をローラーマシンで半自動化し、作業要員を減らした例もある。

11月にはANA日航がグラハン業務の資格を共通化すると発表した。片方の会社の資格を持つ人は、もう片方でもその業務に従事できるようになる。人材を囲い込むのではなく、共用するという発想が斬新で、評価に値する。

官民や空港を取り巻く地域社会も協力して、知恵と投資で人手不足を乗り越えたい。