バンブーズブログ

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多彩なトップに期待する

[社説]JALや日鉄 多彩なトップに期待する
 
 
#社説 #オピニオン
2024/1/18 19:05
 
JALの次期社長に決まった鳥取氏(右)と赤坂祐二現社長=17日午後、東京都品川区
年度替わりの4月1日を控えて、主要企業のトップ人事の発表が相次いでいる。今年は例年にもまして、インパクトの強い、多彩な顔ぶれの新社長の登場に注目が集まりそうだ。

多くの人が驚いたのが日本航空JAL)の次期社長に、客室乗務員(CA)出身の鳥取三津子氏が就任することだ。

日本の伝統的な大企業で社長まで上り詰めた女性がほとんどいなかったことを考えれば、時代を画する人事と言える。

鳥取氏は「安全とサービスの2つが私のキャリアそのもの」という。コロナ禍で旅客が激減したときはCAの他社への出向などに奔走した。危機に直面しても冷静に対応し、社内外と密にコミュニケーションを取りながら物事を進める手腕が評価されたのだろう。

2日に起きた羽田空港での衝突事故の影響など就任早々に難題と向き合うが、記者会見で「自分らしくやっていく」と述べたとおり、力まず焦らず自分の経営スタイルを確立してほしい。

同時に世界的な空の競争のなかで、JALならではの強みや独自性をどう築いていくかにも注目したい。それが今なお男性中心の日本の企業社会に新風を吹き込むことになれば、後に続く人たちへの希望にもなる。

もう一つ注目したいのは日本製鉄の社長に今井正副社長が就任する人事だ。同社は合併した旧住友金属工業の出身者を除けば、新日鉄時代を含めて歴代経営者はすべて事務系の出身だった。

だが、今井氏は大学院で鉄鋼精錬を修め、入社後も製鉄所の現場が長い根っからのエンジニアだ。今井氏の抜てきは「日鉄が脱炭素に本腰を入れて取り組む」という社内外への宣言に他ならない。

高炉の電炉転換や石炭に代えて水素を使う水素還元など脱炭素のメニューは出そろいつつあるが、それを実用化し、今と同じ品質やコストで鋼材を量産するためには、技術的にいくつものハードルをこえないといけない。

現場に精通したトップが陣頭指揮することで、カーボンニュートラル実現に向けた技術開発を強力に推し進めたい考えだ。

経営者選びはその企業がどんな姿をめざすのか、何を重視するのかを示す社会へのメッセージでもある。型どおりの順送り人事から決別し、多様性を重視する企業がさらに増えることを期待したい。