バンブーズブログ

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[社説]カルテル招いた損保の旧弊


 
 
#社説 #オピニオン
2023/12/27 2:00
 
記者会見で損保大手4社への改善命令を発表する鈴木俊一金融相(26日午前、財務省)=共同
大手損害保険会社がカルテルを結び、水面下で企業向け保険料を相談していた疑いが強まっている。公正取引委員会が大手4社への立ち入り検査に踏み切り、金融庁は26日に業務改善命令を出した。競争原理をゆがめ顧客利益を損なう行為は断じて許されない。

公取委が12月に立ち入り検査を始めたのは東京海上日動火災保険三井住友海上火災保険損害保険ジャパンあいおいニッセイ同和損害保険の4社。金融庁は4社に保険業法に基づく業務改善命令を出し、不適切な事案をさらに調べるとともに、ガバナンスを抜本的に改めるよう求めた。

カルテルが疑われているのは企業向けの「共同保険」と呼ばれる分野だ。インフラ事業者や製造業の設備などに万一の事態が生じた際に巨額の保険金を分担して支払うため、複数の保険会社が企業側と契約を結ぶ。損保各社が談合して保険料をつり上げていた疑いが強く、極めて悪質だ。

もともと企業向け損保は独占禁止法に触れやすい環境にあった。大手4社のシェアは9割に達し、共同保険は幹事社の保険料を基準にする慣行がある。顧客企業グループに属する代理店の位置づけは曖昧で、政策保有株など保険契約と別の付き合いも広い。

こうした旧弊が損保会社間のなれ合いを生み、損保会社と企業との緊張感を損ねていなかったか。公取委金融庁は徹底的に真相を究明してもらいたい。

金融庁によると、独禁法の趣旨に反する不適切な保険契約は576の取引先で確認された。不適切な取引が「広く反復・継続して行われていた」(鈴木俊一金融相)のは明らかだ。信頼を礎とする金融業にあってコンプライアンス(法令順守)がないがしろにされていたのは深刻というほかない。

最大の問題は、結果的に不適切な行いを長く放置してきた経営陣の姿勢だろう。自社の利益を優先するあまり、顧客の利益を軽視する風土が存在するのなら、ただちに改める必要がある。