バンブーズブログ

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[社説]持続可能な安保へ政治は責任ある議論を


 
#社説 #オピニオン
2023/12/27 2:00
 
政治が難問を避けていれば抑止力の強化はおぼつかない(航空自衛隊のF15戦闘機)
日本の安全保障の根幹にかかわる見直しが相次ぐ。戦後築いてきた安保政策の転換を導く政治の役割はきわめて重要である。

政府は防衛装備の輸出ルールの改定に踏みだした。他国の特許を使って日本でつくるライセンス品の輸出を全面的に解禁する。部品の対米輸出のみが認められてきた状況を改め、特許を持つ国には完成品でも送れるようにした。

その第1弾として、米国に防空用の迎撃ミサイル「パトリオット」を供与する。ウクライナへの支援で在庫不足に陥った米国の要請を受けた。政府は米国経由で第三国にわたらないことを米側に確認したとしている。

防衛装備移転三原則のもとで殺傷力のある完成品の輸出は初めてだ。国際情勢の厳しい現実を直視すれば、防衛に特化した装備の一定の輸出拡大はやむを得まい。日米同盟や国際貢献の観点に加え、日本の安全保障を支える国内防衛産業の育成も期待できる。

国際共同開発した装備の第三国への輸出解禁については、与党協議で公明党が慎重論を唱えて結論を持ち越した。装備の輸出を認める「救難・輸送・警戒・監視・掃海」の5つの目的の拡大も、撤廃をめざす政府・自民党公明党の折り合いがつかなかった。

日本が英国、イタリアと共同開発する次期戦闘機の輸出に制限がかかれば計画に響きかねない。かたや殺傷力のある武器の輸出は国際紛争を助長しかねないとの懸念もあり、自ら縛りをかけてきた従来の立場との整合性も問われる。

輸出ルールの改定は、与党の提言を受けて政府が決定する流れだ。憂慮するのは、安保政策に関する重大な判断が続くにもかかわらず、それに見合う十分な国会論議や政府内の段取りがなされているとは言いがたい点だ。国民の目にみえるかたちで議論を重ね、丁寧に説明を尽くすよう求める。

大幅増額を決めた防衛費の財源でも政治の動きは鈍い。2027年度時点で増税で年1兆円強を確保する政府方針に対し、与党内で負担増をめぐる議論が避けられ、増税の開始時期を決められなかった。安定財源を確保できなければ日本の抑止力はおぼつかない。

政府の国家安全保障戦略は「わが国を守る第一義的な責任はわが国にある」と明記した。日本にとって持続可能な安保のあり方をめぐり、政府と与野党は責任ある態度をとらなければならない。