[社説]企業は年始の株高に応え一段の改革を
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2024/1/12 19:05
日経平均株価は今年に入り、2112円上昇している(12日、東京都中央区)
年始から日本株の上昇が目立っている。脱デフレの期待などを背景に投資資金が入っている。株高の流れが持続するには着実な企業収益の成長が欠かせない。そのためにも、企業は資本効率を高める一段の経営改革が求められる。
12日の日経平均株価は3万5577円と5日続伸し、1990年2月以来33年11カ月ぶりの高値を連日で更新した。昨年末比2112円高く、6%の上昇率は世界の主要市場で抜きんでている。
株高が再び勢いを増したのは海外マネーの関心の高まりが大きい。今春の賃上げを含め、脱デフレの機運や、企業の統治改革に注目する投資家は多い。地政学的に中国を避け、日本を選ぶ流れもある。時価総額で東京市場が上海市場を抜いてアジア首位に返り咲いたのは変化を象徴している。
国内では今年、新しい少額投資非課税制度(NISA)が始まった。海外への投資も多いとみられるものの、貯蓄から投資に踏み出す家計の資金が株価底上げにつながっているとみていいだろう。
もっとも市場環境が晴れ渡っているわけではない。米国は景気が減速感を強め、今年は利下げを探る。一方で日銀はマイナス金利解除の機会をうかがう局面にある。円高に傾けば輸出企業の逆風になりかねない。世界の地政学リスクも気がかりだ。行き過ぎた楽観は修正を迫られる可能性があろう。
株価は企業業績を映す。11日に堅調な決算を発表したファーストリテイリングは株価も最高値だ。こうした増益を続ける企業が広がらねば、中長期に評価は高まらない。実際、PBR(株価純資産倍率)が1倍を下回る企業は東証プライム市場でなお4割ある。
東証は昨春、PBR向上など企業価値を高める取り組みを開示するよう上場企業に要請した。1月15日からは開示した社名を公表する。これをもとに投資家との対話が深まることを期待したい。
自社株買いなど単なる財務的な手当てでは効果は続かない。自らの強みは何か、付加価値を生む分野で設備や人に積極投資する。事業の取捨選択も含め、資本を成長に生かす戦略を磨いてほしい。
日経平均は89年末の高値をなお下回る。回復局面もこれまでは海外頼みの構図が強かった。働き手に賃上げで報い、家計もNISAなどを通じて潤う。国内の循環を太くしてこそ株高は健全かつ持続したものになっていくはずだ。