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派閥解散を機に党再生へ

[社説]自民は派閥解散を機に党再生へ踏み出せ
 
 
#社説 #オピニオン #自民政治資金問題
2024/1/20 2:00
 
自民党の安倍、岸田、二階各派は解散する方向となった(写真中央は19日の安倍派総会で発言する塩谷座長、党本部)
自民党各派が派閥の解散を相次いで表明した。他派も追随する可能性があり、本気の党再生につなげられるかどうかが問われる。派閥を通じた裏金づくりの事件捜査は事実上終結するが、疑惑の真相究明と自民党の統治システムの見直しはこれからが正念場だ。

岸田文雄首相は19日、自らが会長を務めていた岸田派(宏池会)について「政治の信頼回復のために宏池会を解散する」と言明した。一方で党全体の対応は「他の派閥のありようについて何か申し上げる立場にはない」と述べた。

先頭に立ち悪弊打破を

首相が保守本流として長い伝統がある岸田派の解散に踏み込んだのは、同派をはじめ党内各派の政治資金問題が政府・与党への信頼を揺るがしている現状を重く受け止めたからだろう。

だとすれば首相は内閣改造・党人事や資金集めで派閥が果たしてきた中心的な役割を根本から見直す決意を明確にすべきだ。悪弊を断ち切るため、先頭に立って指導力を発揮する責任がある。

党内では岸田派に続き、安倍、二階両派も所属議員を集めた19日の総会で解散を決めた。党内には「解散やむなし」の声がある一方で、選挙での候補者発掘や新人教育などで派閥が果たす役割は大きいとの意見も根強い。

岸田派などは政治団体を解散し、事務所も閉鎖するとみられる。政治資金規正法上の政治団体でないと資金パーティーの開催が難しく、派閥を介した不透明なカネの流れも起きなくなる。

だが「派閥解消」を掲げた自民党内の取り組みは、1990年代も数多くみられた。

各派が政策集団への衣替えを宣言し、定例総会を党本部の会議室で開く見直しも進んだ。首相をはじめ政権や党の首脳は在任中は組織を離脱し、資金パーティーも自粛すると申し合わせた。

今回の各派による組織的な裏金づくりは、過去の反省と教訓の風化を象徴している。前回よりも派閥解消がどこまで徹底され、実のある党改革に結びつくかは現状ではなお不透明だ。

自民党は政治刷新本部を設け、1月中の中間とりまとめへ作業を急いでいる。政治資金の公開制度の拡充や第三者による監査などとともに、派閥のあり方も重要な検討テーマだ。一部の派閥がその結論を待たずに解散を打ち出したことへの反発も党内にくすぶる。

各派のパーティー収入をめぐる東京地検特捜部の捜査は19日に事実上終結した。多額の資金還流を受けた国会議員3人と、安倍、二階、岸田3派の会計責任者らを立件する一方、松野博一官房長官ら安倍派幹部7人の立件は見送った。

任意の聴取で幹部らは「報告を受ける立場にない」などと説明。共謀を示す物証も見つからなかったとみられ、刑事責任を問うのは難しいと判断した。

だが収支報告書に不記載の収入総額は3派閥で9億円を超える。最多の安倍派は6億円超だ。事務総長などの要職を務めながら、知らぬ存ぜぬですむ問題なのか。還流分を記載しなかった所属議員の大半も罪に問われていない。

還流の仕組みをだれが考え、裏金は何に使ったのか。多くの国民が結果に納得できないのは当然だ。今後、検察審査会が処分の妥当性を審査する可能性もある。

疑惑の幕引き許されず

これまでの捜査を通じて裏金問題の全容が明らかになったとは言い難い。これで一連の疑惑を幕引きにしてはならない。

これだけ不祥事が続く現状を直視すれば、政治資金規正法の抜本改正も避けて通れない。現在は政治家本人を同法違反で罪に問うには、会計責任者に具体的な指示をしたり、報告を受けたりしていたことを立証する必要がある。

政治家の責任を明確にするため、会計責任者の有罪が確定すると議員が失職する「連座制」の導入も検討テーマの一つだろう。26日召集の通常国会で、与野党が議論を尽くしてほしい。

自民党が捜査の終結や一定の党改革で「みそぎは済んだ」と考えるなら見当違いも甚だしい。捜査を理由に十分な説明をしてこなかった派閥幹部や関係者は、自ら経緯を検証して国民に何があったのかを明らかにする責任がある。

司法の場における事件の真相究明と並行し、自民党は「政治とカネ」をめぐる不祥事の連鎖を今度こそ断ち切る覚悟が求められる。再発防止に向けた制度改正と党の統治構造の見直しに本気で取り組まなければ、国民の信頼回復は難しいと肝に銘じてもらいたい。