バンブーズブログ

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[社説]能登半島地震1カ月 避難生活の質を高めるには


 
 
#社説 #オピニオン #能登半島地震
2024/2/1 2:00
 
土砂崩れで寸断された道路。復旧は早くても数カ月かかるという
能登半島地震は1日で発生から1カ月を迎えた。被災地では停電や通信障害が復旧しつつあるが、断水の解消はまだまだ先だ。厳しい避難生活は災害関連死に直結する。これを防ぐには避難生活の質を高めなければならない。高齢化も進む災害大国の重い課題として突きつけられたといえよう。

被害状況は1月31日時点で、死者が238人、安否の分からない人が19人残る。死者のうち災害関連死は15人。熊本地震などと比べて必ずしも多くはないが、把握できていない例もあるとみられ、今後の増加も懸念される。

災害関連死は発災から3カ月、避難生活がある程度、落ち着くまで特にリスクが大きい。暮らしの安定に欠かせない水道の仮復旧は4月になる地域もある。避難生活の一層の改善が急務だ。

避難生活のあり方については、国際的な人道団体が1人当たりのスペースや衛生環境などを定めた「スフィア基準」という目安がある。日本の防災行政も参考にし始めたが、自治体の現場で十分に実践されているとは言い難い。

能登では地理的な制約から被災者支援に困難が伴うこともあり、適切な避難生活には他地域への二次避難が重要であることが浮き彫りになった。住民が二次避難すれば、自治体は被災者支援から復旧作業に重点を移せる。長い目で見て円滑な復興にもつながろう。

ただ今回は二次避難を受け入れる施設の数はそろえたものの、二の足を踏む被災者が目立つ。二次避難先の生活環境や、自宅を離れることに不安が根強いためだ。同様の事態は、今後の南海トラフ巨大地震などでも想定される。

政府は二次避難の重要性を防災行政上、きちんと位置づけ、重要課題として避難生活の抜本的な改善に取り組むべきである。それによって自治体の準備や住民の心構えが深まれば、災害関連死を防ぐ大きな力になる。

いざというときは準備したことしかできない。過去の災害の教訓を今回も改めて肝に銘じたい。