バンブーズブログ

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[社説]高齢化ふまえた住宅再建に


 
 
#社説 #オピニオン
2024/1/28 19:00
 
被災地では仮設住宅の建設が進み始めている(25日、石川県珠洲市)=共同
能登半島地震はまもなく1カ月を迎える。被災者が生活を取り戻すうえで重要なのは第一に住宅の再建である。政府や自治体には、高齢化が進む地域の事情を踏まえた柔軟な対応を求めたい。

被害の状況は徐々に判明してきた。内閣府の暫定的な試算によると、建物などの直接的な被害は石川、富山、新潟の3県で少なくとも1.1兆〜2.6兆円に上る。調査が進めばさらに膨らむ可能性があるだろう。

住宅の損壊は石川県だけで4万棟を超える。被害の大きい奥能登では9割以上が木造住宅だ。政府がまとめた当面の支援パッケージは、仮設住宅はプレハブに加え木造も用意するとしているが、地域事情を考えれば木造主体でよいのではないか。被災者の意向をよく聞いてほしい。

木造仮設住宅は湿度を調節しやすく、住み心地がよいとされる。東日本大震災で使われ始め、熊本地震でも活用された。東日本大震災の木造仮設を西日本豪雨の被災地に移築したり、道の駅に転用したりと再利用もしやすい。

仮設住宅への入居は通常2年が限度だ。その後は自治体による復興住宅などに移ることになっている。ただ高齢者が何度も住み替えるのは環境変化への対応力や資力の面で難しさもある。木造仮設を被災者に払い下げ、そのまま住み続けられるようにすることも選択肢にすべきだ。

そのうえで災害法制として、仮設住宅から復興住宅へという2段階で進める住宅再建のあり方を再考してはどうか。高齢化が進み、地震や風水害が頻発する今は、一度の住み替えで生活を安定させられることが望ましい。

それに対応する建築技術の進歩もあろう。東日本大震災では大量の仮設住宅の建設で復興住宅の適地が乏しくなる例もあった。

住宅支援には、個人財産の被害を政府が補償することの是非を巡り様々な意見がある。そうした点も含め、災害時の住宅再建のあり方について議論を深めたい。