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2024/2/8 19:05
AI向け半導体ではエヌビディアの1強状態が続いている =ロイター
文章や画像を自動で作る生成AI(人工知能)が急速に普及するなか、AIのデータを処理する半導体に参入するテクノロジー企業が増えている。AI半導体の開発や生産の多様化につなげて、安定したサプライチェーン(供給網)の構築を急ぎたい。
足元では米半導体大手のエヌビディアの1強状態が続き、AI半導体の需給が逼迫している。生成AIの開発や運用には大量のデータを効率的に処理する半導体が必要になる。
エヌビディアはこうした特長を持つ画像処理用の半導体をいち早く応用し、AI半導体で8割以上のシェアを持つとされる。1社への依存が続けば供給体制に不安が残る。半導体の価格が高止まりすれば、AIサービスの料金が上がる懸念もある。
マイクロソフト、グーグル、アマゾン・ドット・コムなどは独自のAI半導体の開発を進める。自社のデータセンターで使い、生成AIサービスの運用コストを引き下げる狙いがある。
パソコン向け半導体大手のインテルなどは、AI対応の半導体を搭載する「AIパソコン」の普及を目指す。データセンターだけでなく、端末側でも生成AIを扱えるようにする。
テクノロジー産業では技術の大きな転換点のたびに半導体市場を牛耳る巨大企業が成長した。
パソコン時代にはインテルがパソコンの頭脳に使われる半導体で市場を席巻し独占禁止法当局の批判を受けた。スマホ時代には英アームの設計技術に基づいた半導体が広く普及したが、量産面では台湾積体電路製造(TSMC)への集中が進み地政学リスクが高まった。TSMCはエヌビディアのAI半導体の生産も請け負う。
新たな技術潮流となったAIでは様々な企業が半導体の開発や生産を競い、関連する市場の裾野が世界に広がることが望ましい。生成AIの普及でデータセンターの電力消費も急増している。省電力性能に優れる半導体の開発といった技術革新の余地も大きい。
日本でも先端半導体の量産を目指すラピダスがAI半導体を開発するカナダ社と提携した。TSMCが熊本県に2つ目となる半導体工場の建設を決めるなど外資の呼び込みも進む。存在感が薄れ気味だった日本の半導体産業だが、AI向けでは巻き返して市場の健全な発展に貢献してほしい。