バンブーズブログ

社会の大きな流れは新聞のトップニュースに掲載されます。 その情報を読み続けていくと数年先が見えてきます。それは怖いものなしです。

[社説]合成メタンの導入準備を急げ


 
 
#社説 #オピニオン #カーボンゼロ
2024/1/14 19:00
 
合成メタンは既存のLNG用インフラをそのまま使える(東京ガスの日立LNG基地)
ガス業界が水素と二酸化炭素(CO2)を原料とする合成メタンの導入に動き出した。日本が2050年までにCO2の実質排出ゼロを達成するには、発電や運輸分野に加え都市ガスの脱炭素化も不可避だ。政府と連携し、商用化へ基盤整備を急ぐ必要がある。

大気中に排出されるはずのCO2を回収し、再生可能エネルギーで水を電気分解した水素と掛け合わせる。燃やすとCO2が出るが、全体では炭素中立が可能だ。

国内のエネルギー消費の6割は熱需要だ。CO2を出さない太陽光や風力、原子力などだけでは全てを賄えず、ガス利用は不可欠である。ガス業界は合成メタンを「e―メタン」と名付け、30年に需要の1%、50年に90%を天然ガスから置き換える方針を掲げる。

都市ガスの代替燃料は、水素を直接利用する方法もある。使用時にCO2が出ないのは魅力だが、輸送インフラを新たに整えるには20兆円規模の費用が必要との試算がある。合成メタンは組成が天然ガスの主成分と同じで、既存の液化天然ガスLNG)のインフラや機器をそのまま使える。

ただし、本格導入には乗り越えるべきハードルも多い。

まずはコストだ。ガス業界は初期の単価をLNGの2.5〜3倍と見込む。量産効果や技術革新を促し、将来的にLNGと同等に引き下げていくうえで、当面は補助金などの支援が必要となろう。

国際ルールの整備も課題だ。再エネの安い海外で製造し、輸入利用するのが合理的だが、CO2を利用側でなく原排出側で計上しないと日本の脱炭素につながらない。政府間の合意形成が不可欠だ。

30年の利用開始をにらみ、ガス大手や商社が投資計画を進める。政府も遅れなく呼応し、官民一体で導入環境を整えるべきだ。

日本は1960年代末、世界の先頭を切ってLNGの商業利用に踏み切った経験がある。化石燃料への依存が高いアジアの事情に即した脱炭素のけん引役として、合成メタンの導入も成功させたい。