バンブーズブログ

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[社説]半導体産業の復活へ最後の追い風生かせ


 
 
#社説 #オピニオン
2024/2/24 19:05
 
92歳のTSMC創業者、張忠謀(モリス・チャン)氏が熊本工場の開所式で「日本の半導体ルネサンスを期待し、信じている」と表明(24日、熊本県菊陽町
低迷続きだった国内半導体の事業基盤に復活の兆しが出ている。世界最強の半導体製造会社の台湾積体電路製造(TSMC)は24日に熊本工場の開所式を開き、同地での第2工場建設も決めた。韓国サムスン電子も横浜に研究開発拠点を開設する。

日本勢では積極的な買収で外部の技術や人材をうまく活用するルネサスエレクトロニクスが世界で存在感を高めている。官民の肝煎りで船出したラピダスも最先端半導体の国内生産をめざして、北海道で設備投資を加速している。

一連の動きは偶然ではない。逆風にさらされ続けた日本の半導体だが、今は2つの追い風が吹いている。この機会をものにして、復活へ足がかりをつかみたい。

追い風の一つは技術トレンドの変化だ。これまで倍々ゲームで伸びてきた半導体の性能向上は回路の微細化が支えたが、物理的な限界が近づいている。

それを補完するものとして注目されるのが、製造過程の「後工程」と呼ばれる領域。ここで強みを発揮するのが、半導体材料や製造装置を担う日本企業である。

経済産業省によると、半導体材料では信越化学工業やJSRなど日本勢が世界シェアの49%を保持し、製造装置でも日本企業が3分の1を占める。こうした技術集積の厚みが外資を引きよせ、サムスンなどの誘致につながった。TSMC茨城県つくば市に後工程の開発拠点を開設した。

もう一つの追い風は地政学的な要因だ。半導体のテクノロジーで世界をリードする米国は長らく日本への警戒心を緩めなかった。

ところが、近年の米中摩擦の激化が「技術の地政学」に地殻変動をもたらした。中国の台頭に警戒を強めた米国は経済安全保障における日本の価値を再評価し、虎の子の技術を開示し始めた。

日本の国策会社ともいえるラピダスに、米IBMが「GAA」という次世代技術を供与するのがその証左だ。ラピダスは100人規模の技術者を米国のIBMの拠点に送り込み、先端技術の共同開発に取り組んでいる。

半導体の復興には政府も巨額の支援を投じる。これが最後のチャンスと銘記し、官民ともに覚悟をもって臨みたい。

デジタル革命や国の安全保障にも関わる半導体は21世紀の戦略物資であり、その重要性はいうまでもない。