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2024/2/25 19:00
IEAはこれまでOECD加盟を参加要件としてきた(パリの本部)=ロイター
国際エネルギー機関(IEA)がインドと加盟交渉を始める。「先進国クラブ」といわれる経済協力開発機構(OECD)に非加盟のメンバーが誕生すれば、創設から半世紀で初めての例となる。
世界のエネルギー消費や温暖化ガスの排出は、先進国から新興国へと重心が移った。中国や米国に次ぐ消費・排出大国であるインドの参画を早期に実現させ、世界全体で安定調達や脱炭素に取り組む体制づくりを目指してほしい。
14日の閣僚理事会で交渉開始に合意した。加盟すればアジアからは日本、韓国に続く3カ国目だ。
主要なエネルギー消費国が集まるIEAは、1973年の第1次石油危機を契機に発足した。今回の理事会では32番目の構成国としてラトビアの加入を承認した。これまでは上部機関のOECDへの加盟が参加要件となっている。
加盟国はエネルギー危機に備えて、輸入量の90日分相当の石油の備蓄や、緊急時の協調行動などの責務を負う。近年は脱炭素に向けた政策提言にも力を入れる。
ただ「グローバルサウス」と呼ばれる新興国・途上国が台頭するなか、先進国だけでは政策の実効性が陰りつつあった。インドを加えて消費国連合を拡大すれば、有事への対応力を強化できる。
一方、インドは国際的な合意形成に関与を深め、新興国代表として存在感を高める狙いがある。
OECD加盟国という参加要件をどう取り扱うか、現在は輸入量の10日分程度しかないインドの備蓄をいかに増強するかなど、課題は多い。双方が求める条件に折り合いをつける必要がある。
かつてIEAは中国の受け入れを検討したが、見送った経緯がある。インドを認めれば中国の加盟の是非も改めて議論となろう。
IEAは初の地域事務所をシンガポールに開設することも決めた。東南アジアやオーストラリアとの協力枠組み「アジア・ゼロエミッション共同体」を設立した日本は、アジアの脱炭素化へ向けてIEAとも連携を深めるべきだ。