バンブーズブログ

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COP28首相の演説より日本の今後の課題

[社説]アジアの脱炭素へ協力深め世界に貢献を
 
 
#COP28 #社説
2023/12/2 19:05
 
COP28首脳級会合で岸田文雄首相はアジアの脱炭素化に貢献する意向を示した=1日、ドバイ(共同)
岸田文雄首相はアラブ首長国連邦UAE)のドバイで開催中の第28回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP28)の首脳級会合で演説した。アジアの脱炭素化を主導する考えを表明した。

気候変動対策の行方を左右するのは世界の二酸化炭素(CO2)排出量の約6割を占めるアジアの取り組みだ。日本の脱炭素技術や省エネルギーのノウハウを積極的に移転し、削減に貢献すべきだ。

アジアは日本と同様、電源に占める石炭火力発電の割合が高い。太陽光や風力の適地が少なく、再生可能エネルギーの大幅な拡充は難しい。首相が触れたアンモニアや水素の活用は日本が技術開発で先行する。現実的な選択肢だ。

日本は特殊な国債を出し、世界銀行アジア開発銀行の信用リスクを補完する。融資余力を合計90億ドル規模ほど広げるという。だがインドや東南アジアだけでも年間5000億ドルが必要とされ、欧米の支援を含めても足りない。民間投資も大幅に増やす必要がある。

政府は日本企業の事業展開を促す支援策づくりを急ぐべきだ。アジアでは、補助金や税優遇といった政策も十分ではない。日本が主導するアジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)を通じ、政策ノウハウの提供や人材育成を進めることも重要になる。

まず何よりも、国内の脱炭素をより進めることが不可欠だ。日本はガソリンや電気、ガスへの補助金など脱炭素に矛盾する取り組みも目立つ。国際社会から二枚舌とみられかねない状況だ。

演説では、排出削減対策が未対応の石炭火力について新規の建設を終了することも表明した。既存施設については言及しなかった。世界の潮流は脱化石燃料だ。アンモニアや水素の混焼を使いながらも、石炭を燃やす量をできるだけ減らす姿勢を見せてほしい。

日本は2013年度比でCO2を約20%削減した。30年度に46%という目標の半分近くで「さらに高みを目指す」という。しかし、各国の中央銀行や金融当局で構成する気候変動リスク等に係る金融当局ネットワークなどの分析によると、進捗状況は主要7カ国(G7)の中で最も遅れている。

最新の空調機器や製造装置への更新、住宅への太陽光パネル設置、建物の断熱性向上など、まだできることは多い。脱炭素技術の普及も進めながら削減実績を積み上げることが重要になる。