バンブーズブログ

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[社説]IEA報告が問うカーボンゼロへの決意


 
 
#社説 #オピニオン #カーボンゼロ
2023/9/30 2:00
 
異常気象が頻発し、温暖化対策の加速が求められている(ブラジルの森林火災、2023年9月)=AP
国際エネルギー機関(IEA)は2050年までに温暖化ガス排出を実質ゼロにするための道筋を示した報告書「ネットゼロ・ロードマップ」を発表した。

世界の再生可能エネルギー容量を30年までに3倍に増やす、省エネルギー効率を2倍に高めるなど、一連の対策から見えるのはカーボンゼロに至る道の険しさだ。異常気象が頻発し、温暖化対策の加速が待ったなしとなる状況下で、あらゆる対策を積み上げる総力戦の決意を改めて問うている。

ロードマップはIEAが21年に発表した報告の改訂版だ。ウクライナ侵攻や脱炭素技術の進展などその後の変化を反映した。気温上昇を産業革命前から1.5度以内に抑えるには、50年までに温暖化ガス排出を実質ゼロにする必要があるが、排出量の増加が続く。

報告書は再生エネや省エネに加え、30年までにエネルギー産業が出すメタンの75%削減や、50年までに原子力発電を2倍に増やすことを求めている。30年以降は水素やCCUS(二酸化炭素の回収・利用・貯留)のような新技術を使って温暖化ガスを2割減らすなど、多様な対策をあげている。

そのために30年代初めまで毎年、足元の2.5倍となる4兆5000億ドル(約670兆円)の投資が必要だ。それぞれの対策はいずれも簡単ではない。投資も巨額だ。加えて重要なのは、多岐に及ぶ対策のすべてを同時に実行していかなければならない点だ。

IEAはカーボンゼロという、将来あるべき姿から逆算して必要な対策を導いている。他の研究機関が発表する、現状の政策や需要を積み上げる予測型のシナリオとは差異が生じる。

IEAは石油や天然ガスの開発投資は今後必要ないと言うが、「クリーンエネルギーが増え、化石燃料需要が減少すれば」との条件付きだ。

エネルギー消費の拡大が続く新興国・途上国で化石燃料需要がすぐに減少に転じると考えるのは危険だ。現実には移行期の需要を満たすために、着実な投資を続ける必要がある。滞れば新たなエネルギー危機を招きかねない。

とはいえ、温暖化対策の旗を降ろすわけにはいかない。IEAのビロル事務局長は「あらゆることをできる限りやる」と訴えた。日本もロードマップの重みを受けとめ、脱炭素の難路に総力戦で臨まねばならない。