バンブーズブログ

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[社説]漫画ビジネスの健全な成長を


 
 
#社説 #オピニオン
2024/2/28 2:00
 
漫画「セクシー田中さん」はテレビドラマ化され話題を呼んだが…
漫画市場が成長している。出版科学研究所の推計では、紙と電子を合わせた市場規模は2023年まで6年連続で拡大した。一方で電子配信への対応の遅れ、映像化での契約の不透明さなど課題も多い。健全な発展のため業界全体で解決に取り組みたい。

23年の漫画市場は約7割を電子が占め、紙の売り上げ減をカバーした。書店の減少、物流の逼迫を考えれば在庫負担が小さく、地域を問わず販売でき、手軽に読める電子版は有望だ。

漫画配信では韓国勢が先行し、大手出版社を含む日本勢がこれを追いかけている。縦読み漫画の開発、プロ志望者の自由投稿ページ創設など新興勢はアイデアが豊富だ。日本の漫画界には人気作を電子化しない、電子版の発売を紙より遅らせるなど紙中心の発想が残る。脱皮の時期ではないか。

動画配信の普及でドラマやアニメの需要が増え、原作として漫画への注目度は一段と高まった。漫画は魅力的な物語やキャラクターの宝庫だ。漫画原作のアニメ映画は海外でもヒットしている。

先日、ベテラン漫画家の芦原妃名子さんが亡くなった。自作のドラマ化を巡る原作改変問題を発端とする自死とみられている。

原作者には自分の著作物を意に反して改変されない「著作者人格権」がある。一方、現実には映像制作側がドラマの狙い、撮影条件などから原作と離れた脚本を作ったり、現場で修正を加えたりすることは珍しくない。

過去の不快な体験談を語る漫画家も目立つ。映像化する企業は意思疎通に時間をもっと割き、改変の範囲や方向性などを原作者や脚本家と丁寧に話し合いたい。良い作品を共につくる姿勢がトラブル回避につながる。

フリーランスの漫画家や脚本家が企業と対等に交渉し、適切に情報発信するのは実際は難しい。エージェント(代理人)制の普及や相談機関の創設も一案だ。フリーランスの活用と保護は産業界全体の課題だ。その試金石にもなる。