[社説]取引慣行に見直し迫る日産の下請法違反
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2024/3/9 2:00
下請法違反で勧告された日産自動車 =共同
公正取引委員会が日産自動車に対して、下請け企業との取引で不当な減額を行っていたとして、再発防止を求める勧告を出した。日産も非を認め、30億円強を当該の企業に返還したという。
大企業が立場の弱い取引先に不利益を強いることは社会的に許されないだけでなく、経済全体にゆがみをもたらし、デフレの温床ともなる。日産などの自動車各社をはじめ、多重の下請け構造に依存する陸運業界などは取引慣行の正常化を急ぐときだ。
大企業と中小企業の二重構造は日本経済の古くて新しい課題だが、近年では脱デフレの観点から問題視されている。
中小企業が現場の頑張りで得た生産性向上による利益は、本来なら従業員の待遇改善などに振り向けられるべきだ。だが、その利益が取引相手の大企業に不当に吸い上げられると、賃金上昇が進まず経済の好循環が阻害される。
公取委によると、ピラミッド型の取引系列が強固な自動車業界は、下請け企業との関係でとりわけ問題を起こしがちだという。
過去20年間をみると、代金減額の下請法違反でマツダや大手部品メーカーなどが14件の勧告を受けており、不当な行為や慣行が常態化している恐れがある。
自動車各社は「原価低減」の旗印のもと、取引先に対して毎年のように値下げを要求し、それが日本車の価格競争力や収益力の源泉になってきた。
だが特段の理由のない値下げ要求は妥当なものなのか。経済界の一部にも異論があり、今後、議論を深める必要がある。
日本経済が脱デフレをめざすなかで、個々の企業もコストカットに依存しない体質をつくる必要がある。日本車各社は世界的に再評価されつつあるハイブリッドなどの技術やブランドの強みにさらに磨きをかけ、グローバル競争に向き合ってほしい。
他方で中小企業や下請け企業の側も、特定の取引先の意向に振り回されることのない自立した体制をめざしたい。
顧客基盤を分散・多様化したり、他社にはない独自の技術や製品を開発したりすれば、取引先からのむちゃな要求にも「ノー」といえるはずだ。