バンブーズブログ

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「異次元緩和」脱却を成長の好機に‼️

[社説]「異次元緩和」脱却を成長の好機に
 
 
#社説 #オピニオン #日銀政策決定会合
2024/3/20 2:00
 
11年続いた異次元緩和からの脱却を決めた(19日、日銀本店で記者会見する植田和男総裁)
日銀がマイナス金利政策の解除を柱に「異次元緩和」と呼ばれた異例の金融緩和策からの脱却を決めた。大企業の賃上げが歴史的な高水準となるなか、非常時対応だった枠組みを平時に近づけようとする判断は時宜を得たものだ。

異次元緩和は日銀主導で経済停滞を打ち破る試みだったが、超低金利に慣れきった企業も政府も変化への対応が遅れた。今回の決定を好機ととらえ、民間の活力を高めて成長の底上げにつなげたい。

市場と丁寧に対話を

18〜19日の金融政策決定会合では金融機関から預かる資金の一部にマイナス0.1%の金利を課す仕組みの廃止を決めた。今後は翌日物の市場金利を0〜0.1%の幅で誘導する。

長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)と呼ぶ長期金利を抑える措置も撤廃し、上場投資信託ETF)などは新規購入を終了する。

植田和男総裁は記者会見で「賃金と物価の好循環の強まり」を受け、目標とする2%の物価上昇の定着について「実現していくことが見通せる状況に至った」と述べた。今年の春季労使交渉での賃上げ率が連合の第1回集計で5.28%と33年ぶりの水準となり「判断の大きな材料」にしたという。

黒田東彦前総裁のもと2013年に始まった異次元緩和は「2年で2%の物価上昇」を目標に未曽有の規模で国債を買い上げる非常時の対応だった。当初は円安や株高が景気を押し上げたが、目標は2年では果たせず、その後はマイナス金利やYCCへと変遷した。

近年は強引な新発国債の買い集めが金利体系をゆがめ、一時は企業の資金調達に支障が生じた。円安も加速し、物価高に拍車がかかって国民生活を苦しくした。

好循環の強まりを機に、異例の措置を終えるのは適切な判断だ。植田氏は「異次元の手段は必要なくなった」として、「短期金利を主たる政策手段とする普通の金融調節」に戻すと語った。簡素な枠組みになり、状況に応じた政策の調整が容易になる。国民や市場へのメッセージも明確になる。

緩和的な政策運営がすぐに終わるわけではない。植田氏は「当面、緩和的な金融環境が継続する」と指摘し、経済・物価情勢に応じて利上げの機を慎重に探る考えを示した。より丁寧な市場との対話や精緻な情勢判断を求めたい。

カギとなる適切な政策金利の水準について分析を進めるとともに、先行きの金利の姿について、欧米中央銀行の情報発信も参考に市場との共有に努めてほしい。

米欧のインフレ圧力は根強く、米国では商業用不動産の調整リスクもくすぶる。海外情勢や国際市場の変化にも目を配り、柔軟な政策運営を心がけるべきだ。

YCCの撤廃後も当面は長期国債の潤沢な購入を続ける。長期金利の安定を重視する妥当な判断だが、国債発行残高の5割超を日銀が持つ異常事態は変わらない。市場や政府と対話を重ね、国債保有の削減や政府の財政規律の確保へ長期的な展望を練る必要がある。

今回の政策変更は「金利のある経済」の第一歩にすぎず、経済活動への直接の影響は小さい。ただし利上げがゆっくりと進めば、住宅ローンや企業向け貸出金利も上がり始めるだろう。家計も企業も新しい環境に備えていきたい。

異次元緩和の教訓は、金融政策だけで経済を復活させるのは難しいという事実だ。今回の決定を機に、民間主導の持続的な経済成長へとつなげたい。

民主導で変革に挑戦

賃金と物価の好循環が続くには「物価を超える所得増」、すなわち実質賃金の上昇を定着させる必要がある。欠かせぬ労働生産性の向上は、人手不足のなかで潜在成長力を引き上げる道でもある。

物価も賃金も動かず、金利も超低位だった長年の状況は、生産性の低い企業の延命を許し、経済の変革を妨げてきた。この構図が変われば、果敢にリスクをとって収益を高められる企業が人材獲得や価格設定で優位に立つ。金利機能の復活によって、お金はそうした企業に有利な条件で集まる。

企業は動き出している。味の素は利益成長との両立をめざして値上げを進め、賃上げにも取り組みつつ最高益の更新を見込む。

経済の新陳代謝を促すため、企業はM&A(合併・買収)をもっと活用し、政府や金融業界は円滑な企業再編や事業継承を強力に支援してほしい。人材が生産性の高い分野に移れるよう政府は再教育を通じて人々の能力向上を促し、労働移動の「痛み」を和らげる方向に政策のかじを切るべきだ。