#豊島逸夫の金のつぶやき #コラム#マーケット
2024/4/5 13:46
イスラエルに対するイランの報復の可能性が伝わり、4日のニューヨーク市場はにわか緊迫化。中東の紛争がエスカレートすれば原油価格は1バレル100ドルを超える、などの危機説が流れた。
この日はミネアポリス連銀カシュカリ総裁による「年内利下げゼロの可能性」発言もあった。
本欄では3月21日に「米利下げ回数、FOMC見通しは僅差で3回の危うさ」と題して、利下げ3回維持を前提としている市場に警鐘を鳴らした。3月発表のドットチャートを精査すれば、2回説は5人、1回説も2人いる。経済データ次第では、容易に、利下げ予想回数の中心値が逆転する可能性を秘める状況であった。4月2日の本欄では「好調米経済に利下げは必要か、回数減少なら円安154円も」と題して「米経済が適温経済の様相を強める中で、利下げなど余計なこと」と断じた。
あたかも、それに答えるかのごとく、4日に前述のカシュカリ・ミネアポリス連銀総裁がインフレ鈍化が滞る場合、年内の利下げは必要なくなる可能性を示唆した。すでにボスティック・アトランタ連銀総裁は「12月にはドットチャートに利下げ2回予測を記したが、今回の3月では1回とした」と明かしている。
ただし、それまでの利下げ予測後退論は、米国の国内総生産(GDP)、さらに米サプライマネジメント協会(ISM)製造業景況感指数など米重要経済指標の上振れを論拠にしていた。
4日には中東の地政学的リスクの高まりによる原油高がインフレ再燃を想起させ、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策にも影響を与える事態に発展した。パウエル議長も地政学的リスクには以前から注目していたが、こればかりは金融当局が制御できるものではない。
そして、本日5日は雇用統計が発表になる。
ここでも新たな変化が見られる。米国への移民の急増が、新規就業者数増の理由となる可能性が指摘されているのだ。そうなると、雇用統計の中でも賃金を示す平均時給がより重要になる。移民労働者の賃金水準は低いが、仮に、平均時給が若干なりとも増加すれば、一般的賃金由来のインフレが再燃するリスクとなるのだ。それゆえ、今回の雇用統計では、特に平均時給が注目されている。
かくして市場は新たな不透明感に覆われ、マネーの流れも「質への逃避」傾向を強めている。その代表格が金(ゴールド)なのだが、金利を生まない金にとって、利下げ回数が減ることは、逆風なのだ。駆け込み寺が火事になるごとき状況も絵空事と切り捨てることはできない