バンブーズブログ

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失敗の教訓は未来に生かさなければならない

[社説]国産旅客機開発に欠かせぬ企業の野心
 
 
#社説 #オピニオン
2024/4/7 19:05
 
初飛行する三菱リージョナルジェットMRJ、後に三菱スペースジェットに改称)=2015年11月
三菱重工業によるジェット旅客機参入計画が頓挫してから1年余り。日本の産業界にとって悲願といわれてきた国産旅客機に再挑戦すべきだという議論が出てきた。経済産業省がまとめた報告書では「完成機事業への参画が不可欠であり、これを目標として掲げるべき」と明言している。

国産機は産業の活性化につながり、実現を目指す意義が大きいことに異論はない。

自動車1台の部品点数が3万とされるのに対して、機体のサイズにもよるが飛行機は300万にのぼる。部品や素材を提供するサプライチェーンの厚みはおのずと違ってくる。経済安全保障の観点からも待望論は根強い。

問題は、現実的に担い手がいるのかどうかだろう。

航空機産業を育成するには十年単位の長期視点と、関連産業をまとめる強力なリーダーシップが不可欠だ。いくら政府が青写真を描いても、実行主体となる企業のアニマルスピリッツ(野心)がなければ絵に描いた餅に過ぎない。

日本の現状はどうか。三菱重工は1兆円もの開発費を投じながら事業化することができなかった。川崎重工業SUBARU(スバル)、IHIなど関連する大手企業も、現実的には巨大なリスクは取りにくいのではないか。

これらの企業が技術や資金を持ち合う安易な「日の丸連合」方式ではリーダーシップの所在が不明瞭になってしまう。半世紀前に国産旅客機「YS-11」の失敗で、我々がすでに学んだことだ。

とはいえ、突破口がないわけではない。まず、国産機といえども日本企業だけで完結させる必要はない。先行する欧米企業と協力関係を築いて知見を補うような柔軟な発想があってもいいだろう。

巨額の補助金が飛び交う欧米勢に対抗するには、政府にも腰を据えた取り組みが求められる。GX(グリーントランスフォーメーション)経済移行債を中心に財源をまかなう案が浮上しているが、国民が十分に納得できるような形を示してほしい。

旅客機の事業化にあたって壁となった認証の取得作業でも政府の協力は欠かせない。三菱重工の撤退によって認証のノウハウまでも失うのはあまりに惜しい。

失敗の教訓は未来に生かさなければならない。官民による活発な議論を通じて、野心ある挑戦者の登場を待ちたい。