バンブーズブログ

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ヨーカ堂の経営改革について

[社説]ヨーカ堂の遅すぎた経営改革を教訓に
 
 
#社説 #オピニオン
2024/4/13 19:05
 
イトーヨーカ堂は北海道や東北、信越からの撤退を表明している(2月、北海道内の店舗)
セブン&アイ・ホールディングス(HD)が傘下のイトーヨーカ堂などのスーパー事業について、株式の上場を検討すると発表した。祖業のヨーカ堂が長く低迷し分離せざるを得なくなった原因は、構造改革の遅れにある。他の企業も教訓にすべきだ。

株式上場は、ヨーカ堂やスーパーのヨークベニマルなどを傘下に置く中間持ち株会社を設立し、同社に外部からの出資を募る案が有力だ。2026年2月期までに収益を改善させ、実施するという。

かつて小売りの優等生とされたヨーカ堂は2000年代以降、縮小の道をたどった。時代の変化への対応が遅れた結果だ。高品質で低価格を売りにするユニクロなどの専門店が成長し、衣料品や雑貨、食品を扱う総合スーパーは消費者ニーズからずれていった。

過去の成功体験が経営改革を遅らせた面もある。昨年には衣料品の自主企画をやめ、今年に入って北海道や東北、信越からの撤退を表明した。24年2月期まで4期連続の最終赤字だ。不採算事業を抱えながら抜本的な改革を先送りし、縮小均衡に陥ったのは多くの日本企業にあてはまる。

セブン&アイの井阪隆一社長は10日の記者会見で、上場によって財務的な規律を働かせる考えを示した。高収益のコンビニエンスストア事業に依存したままでは、ヨーカ堂再建のスピードは上がらない。妥当な経営判断と言える。

そごう・西武の売却の過程では従業員との対話不足が目立ち、ストライキにまで発展した。今回のスーパー事業の再編について、必要性と将来像を社員に丁寧に説明することが欠かせない。

上場後は連結対象とすることにこだわらないとしつつも、持ち株の一部は保有し続けるという。食品でコンビニとの連携を重視するためだが、「親子上場」では親会社と子会社の一般株主の利害が対立しかねない。連携効果を説明できなければ、完全分離を求める声が強まることも想定すべきだ。

上場の前提となる収益改善は容易ではない。物価高を背景に、消費者は売り手や商品を厳しく選別している。売り場の魅力を高めるのが急務であり、効率化へデジタル化投資も欠かせない。

消費は節約とこだわりの二極化が進む。安値競争で消耗戦に陥らないために、付加価値戦略が欠かせない。すべての小売業に共通する課題である。