社説]財政健全化へ今度こそバラマキをやめよ
#税・予算 #社説
2024/6/13 19:05
経済財政諮問会議で発言する岸田首相(11日、首相官邸)
政府は今年の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)の原案に、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を2025年度に黒字化する目標を盛り込んだ。
人口減への対応や防衛に欠かせない予算はこれからどんどん増える。無駄の多いバラマキ型の経済運営をやめ、財政に余裕をもたせる努力を続けるのは当然だ。
PBは政策を実施するために必要な経費を、国債の発行といった借金に頼らず、どれだけ税収などで賄えているかを示す指標だ。
骨太の方針は22、23年と2年続けてPBを黒字化する目標の明記を見送った。自民党の積極財政派に配慮したためだ。
25年度の黒字化目標はもともと18年に決めた。今回は3年ぶりにそれを復活させたにすぎない。
自民党内で財政の拡張を求める声は根強いが、黒字化の目標を改めて掲げた背景には金利をめぐる環境の変化がある。
日銀は3月にマイナス金利政策を解除した。その後、長期金利の上昇傾向は鮮明になっている。骨太の方針の原案は「金利のある世界への移行による利払い費増加の懸念」に触れた。
内閣府は名目の長期金利が2.4%なら、30年度の国の利払い費は金利が1.0%の場合に比べ2.5兆円増えると見積もる。いまから借金をできるだけ増やさないように心がけなければ、金利負担で政策に必要なお金を確保できなくなるおそれがある。
なによりも、バラマキの発想を捨てなければならない。
23年の骨太の方針は新型コロナウイルス対策で膨張した歳出の構造を「平時」に戻していくと強調した。しかし実際には、物価高への対応などとして秋に巨額の補正予算を組んだ。平時に復帰したとはとても言えないだろう。
歳出を抑えるために、医療制度などの改革も避けて通れない。同時に、将来の成長を見据えた投資は必要だ。データを用いた根拠に基づく政策立案(EBPM)の仕組みを確立し、半導体など先端産業や脱炭素といった分野への「賢い支出」を徹底すべきだ。
社会保障や子育て、防衛に振り向ける安定財源はまだきちんと確保できていない。消費税を含めた負担の議論からも逃げず、財政の健全化と成長の両立をめざす。険しい道だが、それしか選択肢はないはずだ。