[社説]国は沖縄と今こそ関係修復を
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2024/6/24 2:00
保守回帰の流れの中、岸田首相㊧と玉城知事は歩み寄れるか(23日、沖縄県糸満市の平和祈念公園)=共同
沖縄は23日、慰霊の日を迎えた。沖縄戦の組織的戦闘が終わって79年。10万人近い住民が犠牲になった凄惨な地上戦の記憶が癒えることはない。二度と沖縄県民が戦火にたおれることがあってはならないと固く誓いたい。
反戦の思いと現実の生活の間で揺れ動くのだろうか。沖縄県政は保守の時代と革新の時代が周期的に入れ替わる。最近は県内の選挙で自民党が支持を回復する傾向を見せ始めた。今度こそ、政府は沖縄との関係修復に動くべきだ。
先の沖縄県議選は、自民、公明両党など玉城デニー知事を支持しない勢力が過半数を占めた。首長選でも保守系の勝利が目立ち、2年後の知事選に向けて保守回帰の流れが強まりつつある。
米軍普天間基地の名護市辺野古への移設に関しては公明党が反対しているため、県議会で反対派と容認派が拮抗する状態になった。移設反対が多数だった民意が動き始めた微妙な時期だからこそ、政府には丁寧に埋め立て工事を進める慎重さが求められる。
ところが実際は異なる。埋め立てを担当する沖縄防衛局は8月から本格的な埋め立て工事を始めると唐突に県に伝えたという。両者は2月から工事のあり方について協議してきたが、県には一方的な打ち切りと映った。
半年ほど協議したうえで着工するのはやむを得ない。ただ丁寧さを欠く事務方の対応は、岸田政権に本気で沖縄との関係を改善する意思のないことが背景にあるとみられても仕方あるまい。
保守回帰の動きは県民が中国の脅威を実感していることの表れでもあろう。それなのに自衛隊が平時から使える空港や港湾の第1弾の指定から南西諸島の与那国空港や新石垣空港は外れた。管理する県が難色を示したためで、これではいざというときの避難に支障を来しかねない。
来年は戦後80年である。政府と沖縄県は連携して現実的な対応を進める環境を生み出し、節目の年を迎えたい。